神奈川県に新幹線の新駅構想がある。それはリニア中央新幹線の駅とはまた別に、東海道新幹線の新駅を新横浜と小田原の間、寒川町倉見地区へ誘致する取り組みだ。およそ50年前から待たれている、新横浜と小田原につづく3つめの新駅実現に待ち受ける課題についてライターの小川裕夫氏がレポートする。
* * *
2023年3月、相模鉄道(相鉄)は新たに相鉄本線の西谷駅から分岐して新横浜駅まで走る新横浜線の全線を開業させる。相鉄は2019年11月にJR直通線を開業させていたが、東急電鉄(東急)とも乗り入れを開始することで、相鉄の電車を東京で目にする機会は格段に増えるだろう。
今回の相鉄・東急直通線は、相鉄だけではなく東急にとっても大きなトピックスとなっている。なぜなら、相鉄と同様に東急の電車は新横浜駅へと乗り入れる。それにより、新横浜駅で乗降する新幹線利用者が東急沿線に足を運ぶ機会が増えると見込まれているからだ。来街者が増えることは、東急の沿線価値が向上することを意味する。
新横浜駅は、1964年の東海道新幹線の運行開始とともに開設された。横浜市の玄関でもある横浜駅と比べると、その歴史は短い。新横浜駅が開設された当時、駅周辺は農地が広がるだけだった。以降、新横浜駅は歳月とともに駅周辺の開発が進められた。そうした都市開発の成果もあり、2008年には東海道新幹線の全列車が停車するようになる。
いまや新横浜駅の存在感は大きくなり、神奈川県や沿線自治体、そして相鉄・東急ともに新横浜駅を意識するようになった。
その一方、相鉄には新横浜駅と逆方向に路線を延ばし、新しい新幹線停車駅とつなげる計画もある。
「現在、神奈川県は新横浜駅と小田原駅の中間地点に、倉見新駅(仮称)を新設する計画を進めています。同駅の計画は、1975年から相模川西岸の平塚市・伊勢原市・厚木市の3市が新駅を誘致するための協議会を設立したことから始まっています。その後、1991年に東岸の9市町(相模原市・茅ヶ崎市・海老名市・寒川町など)が協議会を設立。相模川の東岸と西岸で、別々に新幹線の新駅を誘致する取り組みが進められていました」と経緯を説明するのは、神奈川県県土整備局都市部環境共生都市課の担当者だ。