1月28日に両国国技館で開催された「白鵬引退宮城野襲名 披露大相撲」。断髪式には総理大臣経験者のほか、スポーツ界の大物、歌手・ミュージシャンなど超豪華な顔ぶれとなった。髷にハサミを入れたのは約280人だ。
2021年9月に引退した宮城野親方だが、同部屋では有望な若手が次々と育ちつつある。1月場所で幕下15枚目格付け出しとして初土俵を踏み、7戦全勝で幕下優勝した19歳の落合は、デビューから1場所で新十両となる。現行制度下では史上初の快挙だ。
「強豪の鳥取城北高校出身で、同校と宮城野部屋は強いつながりがある。同校の相撲部監督は今回の断髪式でハサミを入れていたが、息子の石浦も宮城野部屋の所属力士です」(ベテラン記者)
落合は小中学生の相撲大会である「白鵬杯」で優勝経験があり、素質を見込まれて鳥取城北に進んだ後に宮城野部屋入り。
「白鵬杯でちびっこ相撲の有望株を見定め、出場者の連絡先リストが重要なスカウト資料になるという周到な戦略が機能しています」(同前)
引退相撲の土俵で稽古をつけたモンゴル出身の2人のアマ力士も鳥取城北から同志社大に進んだという経歴で、「ともに宮城野部屋入門を希望している」(同前)とされる。
「本来、外国人力士は1部屋に1人までの決まりだが、日本での生活実績が10年あれば例外となる。そうした決まりを知り尽くしたうえで、モンゴル出身者を複数スカウトしている。最近は強豪の日大相撲部ともつながりを作り、有望株を独占する勢いです。“強い弟子を育てた”という実績を作ることが、協会内での出世の近道と考えているのだろう」(同前)
所属する一門の理事だった伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)が部屋の不祥事で失脚し、現在は理事が空席。次期理事は浅香山親方(元大関・魁皇)が有力で1月場所後に役員待遇に引き上げられた。
「来年の理事選で白鵬がいきなり理事になるのは厳しいかもしれないが、3年後なら可能性はある。落合だけでなく、幕下上位で勝ち越した川副、向中野もいるし、弟子がどんどん関取になる可能性は十分ある。かつての藤島軍団のような強いガチンコ集団を作れば、スピード出世も夢ではない。もはや、協会内で対抗できる勢力はないのでは……」(担当記者)
前代未聞の断髪式で圧倒的な存在感を見せたが、“白鵬の野望”はどこまで実現するのだろうか。
※週刊ポスト2023年2月24日号