外交官として仕事をするのも、皇族として仕事をするのも、国のためという意味では同じだと思います──天皇陛下がプロポーズとともに贈られた言葉のとおり、雅子さまは国と国との橋渡しとしての役割を全うされようとしている。大災害に心を痛められながらも、胸の内にあるのは「自分に何ができるのか」というお気持ち。
令和を迎えて初の「天皇誕生日一般参賀」が2月23日に開催される。社会全体がウィズコロナへと移行する中、皇室行事も徐々に再開されていくようだ。
「中止が続いていた園遊会なども、再開に向けた具体的な議論が始まります。雅子さまのお出ましの機会も増えていくでしょう」(宮内庁関係者)
雅子さまは昨年、国内地方公務への復帰を果たされた。今後ますますのご活躍が期待される一方で、体調不安説が持ち上がっている。
「深夜の散歩が増えているそうです。散歩で生活のリズムを整えられればよいのですが、就寝時間が不規則になってしまっているのではないでしょうか」(別の宮内庁関係者)
そんななか、2月6日、トルコ南東部のシリア国境付近でマグニチュード7.8の大地震が発生した。死者は両国で3万5000人を超え、倒壊した建物のがれきの下には、発生から1週間以上経っても多くの人が取り残されたままだ。命懸けの救助活動により奇跡的に救われる命もあるものの、生き残った人々は最低気温が氷点下に達する厳しい寒さと混乱の中、避難生活を強いられている。
両陛下は地震発生から3日後の9日、お見舞いのお気持ちをトルコ大統領あての電報に託された。とりわけ海外生活のご経験が長い雅子さまは、被災した人々に思いを寄せられ、深く心を痛められていることは想像に難くない。いますぐ被災地に駆けつけんばかりの思いを抱かれているかもしれない。
アジアとヨーロッパの境に位置するトルコは、親日国として知られている。
「19世紀末、和歌山県沖でトルコ(当時はオスマン帝国)の軍艦エルトゥールル号が遭難し600名近い死者が出た際、紀伊半島の地元住民が不眠不休で生存者の救助や遺体収容にあたったことは、トルコ国内でよく知られています。また80年代のイラン・イラク戦争時、イラン在住邦人の脱出はトルコの航空機により果たされました。困難に陥った際、助け合ってきた二国と言えます」(外務省関係者)
2019年、トルコのエルドアン大統領夫妻の来日時にも、両国の良好な関係が明かされた。
「両陛下は皇居に大統領夫妻を招かれ、雅子さまは和装でお出迎えになりました。療養中の雅子さまには洋装の方が負担が少ないと思われていたのですが、陛下の即位からわずか2か月後の来日ということもあり、日本の伝統的装いでお迎えしたいと、雅子さまご自身が和装を選ばれたといいます。大統領夫人のグレーベースの装いに、雅子さまの薄緑の着物は静かに調和しており、結果的に大成功でしたが、和装という決断には職員も驚いたものでした」(前出・宮内庁関係者)
雅子さまらしいゲストファーストのおもてなしには、ある特別な理由があった。
「2011年の東日本大震災で、トルコ政府は地震発生からわずか10日間で救助隊を派遣しました。隊員は行方不明者の捜索活動に参加したほか、毛布やシーツ、缶詰などの物資が大量に提供されました。トルコの救助隊は各国の中でも最も早く現地入りし、最後まで現地に残りました」(前出・外務省関係者)
2019年の会談で両陛下は、改めて感謝の言葉を伝えられた。
「このとき陛下は『両国はともに地震のある国』と話されました。歴史的なつながり以外にも地震災害国としての共通点が、日本とトルコにはある。同席されていた雅子さまも、そのときのことをよく覚えておいでなのでしょう」(前出・宮内庁関係者)
実際、東日本大震災の約7か月後の2011年10月、トルコ東部地震が起きた。このとき、日本から支援に駆けつけた人の中に、NPO職員の宮崎淳さん(享年41)がいた。
「現地での支援活動中、宿泊先のホテルが余震で倒壊し帰らぬ人となりました。トルコの人たちは宮崎さんへの感謝の気持ちを忘れまいと、公園など公共施設に宮崎さんの名を冠し、銅像も建立しています」(NPO関係者)
陛下は昨年2月の誕生日会見で宮崎さんの功績に触れ、国を超えた助け合いの大切さや、トルコの人たちの温かな気持ちへの感謝を改めて表明された。今回のトルコ大地震は、それから1年も経たないうちに発生したことになる。
「陛下はこの誕生日会見で、“被災地への思いはつねに雅子さまと共有されている”と話されました。トルコとの助け合いの歴史についても、雅子さまと話されているのでしょう。どの国の要人とも等しく接される雅子さまですが、トルコ大統領夫妻との会談にあたって和装を選ばれたのにも、そうした背景が強く関係しているのかもしれません」(皇室ジャーナリスト)
皇室関係者によると、トルコ大統領あてのお見舞いの電報も、両陛下の行き届いた心配りによるものだったという。
「両陛下は日本メディアのみならず、世界のメディアを通じて現地の情報を注視されているそうです。いまご自身にできることはないかと自問自答されているのでしょう」