コロナ禍で身近になった薬といえば、感染・発熱時の自宅療養などで用いられる「解熱鎮痛薬」だろう。ドラッグストアで買い求める人があまりに多くて「店から消えた」と騒ぎになったものもある。しかし、その薬を飲んだ患者たちに異変が起きていた。
1月17日、医薬品類の安全対策などを担う厚労省所管のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が確認した「薬の新たな副作用」が報告され、同省は医薬品の添付文書(使用上の注意)の改訂指示を出した。
今回の改訂で解熱鎮痛薬のカロナールに代表される「アセトアミノフェン」が含まれる薬(総合感冒剤、鎮咳剤など)の「重大な副作用」として新たに加えられたのが、〈薬剤性過敏症症候群〉だ。
一体、どんな症状なのか。PMDAの審査員を務めた経験のある谷本哲也医師(ナビタスクリニック川崎)が解説する。
異常を感じたら医療従事者に相談を
「薬の成分がきっかけで発症するアレルギーの一種です。今回、添付文書には〈初期症状として発疹、発熱〉があり、さらに〈肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加〉などを伴う〈遅発性の重篤な過敏症状があらわれることがある〉と記載されました。具体的な症状は人それぞれ違いますが、数分でも発症するアナフィラキシーと違い、数週間が経ってから起こる『遅発性』も特徴の一つです」
どんな薬でも、当然、効果とともに副作用のリスクはある。それらは医師や薬剤師が参照する「医療用医薬品添付文書」に記載されるが、注意すべきは、新たに確認され「追加」された副作用だ。谷本医師が言う。
「薬には、年単位で、数千~数万人以上の多くの人に使われて初めて把握できる副作用もあります。アセトアミノフェンのように安全性が高く昔から使われている薬でも、製薬会社やPMDAなどに新たな副作用報告が一定程度蓄積されれば、添付文書の改訂が行なわれます」
注意したいのは、医師や薬剤師が新たな副作用を把握しきれず、患者への注意喚起が十分ではない可能性がある点だ。
「よく知っているつもりの薬でも、副作用情報について医療従事者すべてが更新内容に精通しているわけではありません。神経質になりすぎる必要はありませんが、薬を飲み始めて違和感が生じたら、医療従事者に早めに相談しましょう」(同前)