3月9日に中国との初戦を迎えるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の日本代表。エンゼルス・大谷翔平(28)やパドレス・ダルビッシュ有(36)といったメジャーリーガーたちが大舞台でどんな活躍を見せるのか注目が集まっているが、そうしたなかで球界関係者の間で高い関心が向けられているのが、栗山英樹監督の采配だ。
栗山監督は、2012年からの日本ハム10年間の政権下で、1度の日本一(2016年)と2度のリーグ優勝(2012、2016年)を成し遂げた。その一方で、試合中に様々な奇策を打ってきたことでも話題を集めた。
例えば2016年シーズンでは、首位を走るソフトバンクとのビジター戦で「1番投手・大谷」を起用。この試合で大谷は初球先頭打者ホームランを放ち、投げては8回無失点で勝利投手となり、逆転優勝へのきっかけとなった。また、2019年シーズンでは先発投手が打者一巡程度を投げたのち、タイプの異なる投手が2番手を務める「栗山流オープナー」と呼ばれる独自の戦術で勝利を重ねた。
WBCでもこうした大胆な采配を振るうのだろうか──栗山監督をよく知る球界OBたちにそう訊ねると、意外な答えが返ってきた。2013年WBCの戦略コーチで、ヤクルト時代は栗山監督とともにプレーし、引退後は楽天や西武のコーチとして対戦した橋上秀樹氏(現・新潟アルビレックス監督)が語る。
「そもそも栗山さんはそれほど策士ではなく、比較的オーソドックスな戦術を用いる印象です。自分の戦略というより戦力ありき。一見、奇策に映った2016年の『1番投手・大谷』も、栗山監督は大谷が二刀流をこなせる技量があることを分かったうえで取った戦術でした。“この選手がいるからこの戦略”というタイプなので、今大会の日本代表のような一流の選手を集めたチームで手腕を発揮するんじゃないでしょうか。奇策を打つ必要はないと思いますよ」
現役時代は西武の外野手として活躍し、引退後は日本ハムの栗山監督の下で一軍外野守備走塁コーチを務めた大塚光二氏もこう語る。
「栗山さんはものすごく選手寄りの監督ですね。当時の日ハムは近藤健介(29)や西川遥輝(30)も駆け出しの頃で、どうすれば若い選手が輝くかを考えていました。今回のような平均年齢も若いスター選手を集めた試合では適任じゃないかなと思います。長いペナントレ―スと違って、短期決戦では奇策はやらないのではないでしょうか。選手の特性を生かそうとする監督ですからね。個々の能力に期待して采配するんじゃないですかね」
果たして栗山監督はどんな戦略に打って出るのだろうか。