回転寿司チェーン大手「スシロー」の店内で、少年による迷惑行為が映った動画がSNSで拡散され大騒動に。井筒和幸監督はこの騒動をどう見たのか。
* * *
回転寿司スシローで醤油ボトルや湯吞みをペロペロ舐めた少年は、通っていた高校を退学して、ペロぺロ動画は世界中に拡がった。さすがにネット社会、高校にはきっと「どんな教育してるんだ!」とか、クレーム電話は山と入ったんだろう。
まあ、よくもあれだけアホを晒すもんだ。スマホで何の迷いもなく撮っていたガキもアホだし、ほんとに呆れた餓鬼どもだ。「餓鬼の目に水見えず」というが、飢えて喉も心も渇きまくっている奴らは目の前に水が流れてることも知らない。目の前の水というのは、少年の身近にいるはずの家族や親友のことだ。「バカもん!止めろ!」と怒鳴ってくれる、教えてくれる、諭してくれる人間がいたら、退学もネット拡散も何もなかっただろう。今まで毎日、少年どもはペロペロやってきたわけじゃなし、頼りになる身内や大人は、餓鬼どもがいつも見ている小世界には誰もいなかったんだろう。少年はひとりぼっちだったことを、今、初めて思い知っているかもだ。
デタラメやいい加減なことばかり言いふらす奴が世界中にあふれて、ネットの所為で、「ホラ吹き」や「たぶらかし」が流行りにさえなって、世界中を戸惑わせて不安にさせている。そして、餓鬼どもの周りだけでなく、今、ものごとを一からしっかり教えてくれる人間は少ない。その場かぎりのことを適当に聞かされ、それで会話も終わり、ネットニュースに大人もガキも絆(ほだ)され、騙されどおしで生きている。
ペロペロ動画はフェイクCG画像でなく実像だ。お陰で、株価まで暴落したスシローの被害は甚大だ。業務妨害罪に問われるばかりか、スシローから損害賠償で訴えられると、家族生活が変わり果てるくらいの莫大な額の支払いも、家族は覚悟するしかないだろう。だが、それ以上に憂うつなのは、世界中に拡散されてしまった動画は、当人の末代まで晒されてしまうことだ。
ガキも大人も改めて知っておく必要がある。――「SNS」という道具でどんな言動だろうが文章だろうが、一旦、発信してしまうと、それは自分の家の玄関ドアの表に自分の尻の穴まで写った全裸写真が、自分が死のうが引っ越そうが、そこに永遠に貼り付けられて、剥がすことも出来ないまま、表を行き交う無数の人たちに見続けられることと同じなのだ、と。発信するにはその覚悟が要るのだ。