劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』は二〇二〇年十月に公開されるや大ヒット、日本映画の歴代最高興行収入を記録した。エンディングに流れる、LiSAの歌う主題歌「炎」も話題を呼び、日本レコード大賞の「大賞」を受賞している。「炎」の作詞作曲と楽曲プロデュースを担った梶浦由記氏に映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、創作の裏側を聞いた。
* * *
梶浦:原作漫画は読んでいたので「ああ、なるほど。確かに物語が始まりから終わりとして一区切りついてるし、あのエピソードが一本の独立した映画になるのはすごく納得がいくな」と思って参加していましたね。
──主題歌「炎」は、どのようなイメージで作られましたか。
梶浦:「炎」はアニメスタッフのみなさんとも話し合い、「ミドルバラードだね」となりました。ゆったりとしたバラードです。重要人物との離別シーンで終わるので、人を送る歌であることは間違いないというところから始まったんです。ですから、書きやすかったというか、イメージとしては膨らませやすかったですね。
──テレビシリーズのエンディング曲も担当されましたが作り方に違いはあるのでしょうか。
梶浦:テレビシリーズと映画の一番違うところは、映画は流れるシーンが限定されることなんですよ。テレビシリーズは、オープニングでも、エンディングでも、その曲が流れるシーンって、毎度違うんですよね。その回がすごく楽しく終わることもあれば、悲しく終わることもあるので。ですから、テレビだとシーンを限定して曲を作ってはいけないんですよ。そうでないと、矛盾してしまう回が出てしまうので。
全体的に合うというか──「全体像」として楽曲にしなきゃいけない。でも、映画は「もう、このシーンでこのセリフの後に流れる」と決まっているんです。そこでしか流れないので、非常に限定的なシーンの楽曲として書くことができるんですね。テレビシリーズの曲の書き方と映画のエンディングの書き方って全然違うんですよ。
──映画の方がそれが流れるシーンのイメージに合わせて曲が作れる、ということですね。
梶浦:それに、テレビシリーズはオープニングの曲だと九十秒で絶対に切れます。その九十秒の中に、山・谷・山が必要です。でも映画は、エンディングなら四~五分、ずっと流れる。ですから、始めに静かなところが二分続いても一向にかまわないわけです。だから、それによって聴かせ方も違うんですよね。
──テレビシリーズは確かにオープニングもエンディングもちゃんと毎回九十秒、と決まっていますからね。
梶浦:そう。ですから、曲もはじめからサイズが決まっているわけです。