旧統一教会信者である両親から止められ、教団から妨害されても屈せず、顔を出して宗教2世としての被害を訴え続けてきた小川さゆりさん。そんな彼女が自らの半生を綴った手記『小川さゆり、宗教2世』が、来月刊行される予定だ。教会や両親への赤裸々な思いを綴った覚悟の手記の内容とは──。小川さんが告白する。【第1回】
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両親は、1988年10月に韓国のメッコール(韓国の統一教会系企業・一和が製造する炭酸飲料)工場で行なわれた合同結婚式で、教祖である文鮮明にマッチングされる形で結婚しました。私はふたりの兄に続いて、3人目の「神の子」として生を受けました。
物心がついた頃から、教会や母から純潔だけは守らなければならないと強く教え込まれました。祝福2世は生まれながらにして原罪のない神の子だから、血を汚してはいけないというのです。
『小学生のための原理講義』という教本には、淫乱の罪は「最大の罪」「死んでも消えない、大変な罪」と書かれていました。人間が寿命以外で死ぬ場合は、男女の愛の問題が関わっていることが多いと説明されています。そして、派手に着飾り、胸元の開いた服を着ている女の子のイラストが載っていて、そういう人は「サタンに利用されてしまう」といいます。
結婚する人は神様が準備してくれているんだ。両親のような合同結婚式での結婚は、私の憧れでした。
しかし学校での私は、家や教会で祝福された「神の子」ではなく、むしろ自分はみんなよりも劣っているように思っていました。私の家は他の家庭より貧しいのだと感じていたからです。
私が3歳頃から通っていた保育園では、運動会で着る緑色の体操服を私だけが買ってもらえず、白いTシャツと水色のズボンを穿いていました。
また、小学校の卒業アルバムは、我が家にとっては高価なものでした。上の兄ふたりが卒業アルバムを買ってもらえなかったことは母から聞いていて、私のときも母は学校に「うちはお金がないので卒業アルバムを買えません」と連絡していたそうです。
卒業の日が近づくと、母に家でこんなことを言われました。
「いま、先生たちが職員室で、さゆりちゃんがどうしたら卒業アルバムを買ってもらえないことをみんなに悟られないようにできるかを話し合ってくれてるみたい」
母は先生たちについて、「すごくいい先生たちだね」「堕落世界にもいい人たちはいるからね。そういう先生たちに本当は神様のことを教えてあげないといけないんだよね」と言っていました。
私は心がずっと黒い霧で覆われた気持ちになっていました。そんな配慮をされる自分が恥ずかしいという思いでした。
卒業式当日は、教室で卒業アルバムを配るのではなく、職員室へひとりずつ卒業アルバムを取りに行く形になり、先生たちは紙に印刷した手作りのアルバムを私に渡してくれました。私はそのアルバム代わりのものを受け取ったとき、心の底から嬉しいと思うことができませんでした。そこまで先生たちにさせてしまったことが、申し訳なく恥ずかしかったのです。
(第2回につづく)
※週刊ポスト2023年3月3日号