国内

「私の足を掬うための財務省の策略」安倍晋三元首相が『回顧録』で語った森友問題解決への重要な新証言

『安倍晋三回顧録』では森友学園問題について重要な新証言も(写真/AFP=時事)

『安倍晋三回顧録』では森友学園問題について重要な新証言も(写真/AFP=時事)

 2月8日に発売されるやいなや、国内外で反響を呼んでいる『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)。森友学園問題を追及し続けてきたジャーナリスト・相澤冬樹氏は山口県下関市で思いがけず妻・昭恵さんに遭遇。本の内容について「全部いいです」という彼女の感想を聞くこととなったが、安倍氏は同書のなかで森友学園問題について重要な新証言をしている。相澤氏がレポートする。【前後編の後編】

 * * *

土地取引は「深刻な問題」

 安倍政権を揺るがせた森友事件だが、記憶が薄れている人もいるのではないか。様々なことがあって複雑になった感があるが、根本は極めて単純だ。国有地の値引き売却が不当ではないかという疑惑である。

 財務省近畿財務局が森友学園に9億円の国有地を8億円も値引きして売った。昭恵さんは学園の小学校の名誉校長だった。昭恵さんと籠池夫妻のスリーショット写真が国との交渉で持ち出されたこともわかっている。そこで「首相の妻に忖度したんじゃないか」と国会で炎上。“忖度”という聞き慣れない言葉が一躍、流行語になった。

 話を『安倍晋三回顧録』に戻すと、安倍元首相も同書で森友事件に言及している。313ページ、「安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘」という見出しの一節だ。

〈森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない〉

 消費増税先送りを巡る暗闘があったため、政権を倒したい財務省の策略だったのではないかという見立てだ。さらに続けて、こう書かれている。

〈財務省は当初から森友側との土地取引が深刻な問題だと分かっていたはずなのです〉

 これは重要な発言だ。安倍氏は政権当時、値引きは地中で見つかったゴミの撤去費だから“問題ない”という財務省の主張を追認していた。ところが「深刻な問題」だと自ら認めている。251ページにもこうある。

〈この土地交渉は、財務省近畿財務局と国土交通省大阪航空局のミスです〉

 問題の土地で新たに見つかったゴミの処理が不適切で、籠池氏に裁判を起こされそうになって慌てた官僚たちが値下げをした──安倍氏はそんな筋立てで事件を読み解いている。そのうえで、だが官僚は「絶対に間違いは犯していない、という立場を取る」とも述べている。首相在任中は言えなかったことも退任後は言えるようになったということだろうか。

 値引きは正しいか、不当か? 真相解明は今も十分可能だ。ボーリング調査をすれば、地中深くのゴミが本当にあるのかどうか、わかるはずだ。値引きが不当だというのは、大阪府不動産鑑定士協会が3年前に公表した報告書でも指摘されている。ゴミの撤去費用は「信用性に欠ける」とし、値引きの根拠とされた鑑定について「依頼者である近畿財務局の意向に沿う形で鑑定評価書が作成され、結果として依頼者に都合良く利用された」とある。

 森友事件は、「安倍氏の関与があったか」に焦点が集まり、政治的対立が深まったため解明が進まなかった側面がある。本来ならまずは値引きが正当かを解明すべきだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン