3月開催のWBCに向けて調整を行なう侍ジャパン。2月17日から始まった宮崎キャンプで、若手投手陣から熱い視線が注がれているのが、チーム最年長の36歳右腕・ダルビッシュ有(パドレス)だ。
ダルビッシュがキャンプ初のブルペンに入った際は、その投球を見ようと若手の投手たちが大挙して駆けつけた。山本由伸、宮城大弥(オリックス)、高橋奎二(ヤクルト)、戸郷翔征、大勢(巨人)、湯浅京己(阪神)が捕手の後ろでダルビッシュの投球を食い入るように見つめ、佐々木朗希(ロッテ)も途中でスマホを取り出し、投球を撮影していた。
WBC使用球はNPB公式球に比べて、縫い目が低く滑りやすいとされている。ボールの個体差もあるため、投げる感覚が全く違うという。変化球の制球に苦しむ投手が多い中、ダルビッシュが積極的に話しかけて助言を送っている。握りやリリースポイントなどを熱心に伝え、佐々木朗はスライダー、宮城はフォークの制球が明らかに改善された。
スポーツ紙記者は「合宿前のトレーニングで、戸郷もダルビッシュに教わり、感激の面持ちだった。若手たちから見ればメジャーで活躍している雲の上の人ですが、個々の投手の特徴をつかんだ上で的確な助言を送ってくれる。心酔して、“ダルビッシュ塾”に弟子入りする投手たちが殺到している状況です」と語る。
今回のWBCは連覇を狙う米国が優勝候補の大本命だが、侍ジャパンの下馬評も高い。とりわけ、投手陣は「メジャー予備軍」ともいえる。NPBの試合を視察しているメジャーのスカウトは太鼓判を押す。
「日本の投手はとにかくレベルが高い。山本、今永(昇太、DeNA)、佐々木朗は間違いなくメジャーで通用する。高橋宏斗(中日)、戸郷、伊藤大海(日本ハム)にも注目している。彼らも2~3年後には日本を代表するエースになるだろう。彼らに共通しているのは球が速いだけでなく、変化球のクォリティーが高いこと。制球で崩れる心配がないから、信頼できる。WBCはメジャーのスカウトが注目する大会でもある。侍ジャパンの選手たちの評価はさらに高まると思うよ」
1990年から2010年代前半まで巨人にFA移籍することが、野球人生のキャリアアップとされてきた。各球団の4番打者、エースを集めてきたが、現在はそのブランディングが通用しなくなっている。20代の選手たちは物心ついた時からメジャーが身近な世界だった。イチロー、松坂大輔、黒田博樹、ダルビッシュ、田中将大(楽天)らが海の向こうで活躍している姿を見て育っている。