春夏合わせて7度の甲子園制覇を誇るPL学園だが、硬式野球部は2016年夏を最後に休部となり、生徒数も減少の一途を辿る。今年の入試では国公立コースの受験者が「ゼロ」となったことを報じた『永遠のPL学園』(小学館文庫)著者の柳川悠二氏(ノンフィクションライター)が、学園の窮状を追った。
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国公立コースにひとりの受験者もいなかったPL学園の入試の日(2月10日)、かつて高校野球で絶大な人気を誇り、定時制とあわせて1000人以上の学生が共同生活を送って学んでいた同校の敷地内は静けさに包まれていた。目立つのは老朽化し、黒ずんだ外壁の校舎ばかりだ。
高校の生徒数が3学年あわせてもわずか75人で、付属の中学も43人。中学1年生にいたっては7人しかおらず、いずれ高校の生徒も一学年に一桁台の時代が訪れるかもしれない。
そして、同校が抱える難題は生徒数の激減ばかりではない。2002年に始まった文部科学省の調査によって明らかになった耐震性に問題のある建物がいくつも存在し、建て替えや改修工事が施されないまま使用される状態が続いているのだ。大阪府教育庁私学課の担当者が明かす。
「報告は学校から受けており、これまでも働きかけをしてきました。耐震性に問題のある建物は全部で6棟あり、生徒が授業を受ける2号館、4号館のほかに、図書館、剣道場、金剛寮、葛城寮です。寮を除いた4棟に関しては令和4年度をもって未使用化、つまりその建物は使わないという方向性だと聞いています」
学園に取材を申し込むと、川上祐一教頭が対応した。彼は2016年に硬式野球部が活動を休止した際、監督を務めていた人物だ。彼自身は剣道部出身で野球経験はなかったものの、学園の母体であるパーフェクトリバティー教団幹部の意向を受け、硬式野球部の事実上の廃部を先導した。川上氏は耐震性の問題について「早急に対応しているところです」と話し、こう続けた。
「これまでも小学校の校舎に中学生を移動させるなどして対処してきました。校舎や図書館に関しては未使用化で進めるつもりでおります」