最近は時代が変わってきたなと感じます。自分もヒゲ芸人の歴史を開拓したひとりだと自負していますが、個人的には笑い飯(の西田幸治)さんですかね。おかしな言い方ですが、特にキャラクターに由来しない、エクスキューズなしのヒゲを生やしてのM—1優勝は、素晴らしいです。
結局、生やすにしろ抜くにしろ、越えるハードルは一緒。「若いくせに」、「芸人のくせに」と得体の知れない“らしさ”を理由とした圧……これに尽きる。いまは、そんなことを周りがいろいろ言う方が余計なおせっかい、おかしい、気持ち悪いという考えがかなり浸透してきていると思います。
ぼくは常々、ヒゲは額縁で顔が絵画だと考えています。ヒゲがあると安心する、ある意味、「守り神」のような存在でもあるかもしれません。ヒゲも森も一度切ってしまう、伐採してしまうと再び育てるのには時間がかかる。大切なビジネスパートナーであるヒゲを、これからも大事に手入れしていこうと思っています。
【プロフィール】
山田ルイ53世(やまだるいごじゅうさんせい)/お笑い芸人、作家。お笑いコンビ髭男爵のツッコミ担当。執筆業でも才能を発揮。『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)、『一発屋芸人列伝』(新潮社)など著書多数。
※女性セブン2023年3月2・9日号