3月12日に初日を迎える大相撲春場所の番付が発表された。先場所、西十両12枚目で14勝1敗の成績をあげて優勝した朝乃山が「幕内復帰なるか」と注目されたが、東十両筆頭にとどまった。大関経験者である朝乃山には新型コロナウイルス感染対策ガイドライン違反で6場所連続出場停止処分が下され、昨年7月の名古屋場所に三段目で復帰の土俵を踏んでからは順調に番付を上げてきたが、再入幕はおあずけとなった。
一横綱一大関という異例の番付が続き、上位陣になかなか安定した成績を残す力士がいないなかで、正攻法の四つ相撲が取れる朝乃山の復活を願う声は多い。そうしたなか、春場所での幕内復帰が叶わなかったことについて、相撲担当記者は「順当な判断ではある」と話す。
「今回、幕内から陥落したのは全休の逸ノ城、途中休場の栃ノ心、幕尻で負け越した千代丸の3人。これに引退した隠岐の海のぶんを合わせて、昇格できるのは『4枠』だった。十両からの昇格候補には武将山(西筆頭・9勝)、北青鵬(東2枚目・9勝)、金峰山(東5枚目・11勝)、大翔鵬(西6枚目・12勝)と上位で好成績を残した力士が多く、朝乃山はその次の5番手でした」
同じ番付で同じ成績を残したとしても、他の上位の力士の成績によってどれだけ枚数を上げられるかが変わるため、“番付は生き物”とも称される。先場所、幕下15枚目格付け出しで7戦全勝優勝した落合の十両昇格も微妙な判断だったが、大きな話題を呼んで注目を集めた落合は、幕下東5枚目の塚原(5勝2敗)といった他の候補を抑えるかたちで十両昇格が決まった。
ちなみに「新十両」は化粧廻しなどの準備があるため番付編成会議当日に発表されるが、その他の新番付は番付発表日まで極秘扱いとなる。そうしたなかで、「朝乃山の再入幕はあり得る」という周囲の期待も高まっていた。
「結局、完全に客観的な判断なんて、なかなかできない。番付編成会議は審判委員が集まって議論するが、各一門から選ばれた審判委員は一門の利益代表でもある。マスコミの新番付予想が外れることが少なくないことからもわかるように、番付と勝ち星を対照していくのは簡単ではない。だからこそ、今回の朝乃山のように微妙なケースは少なくないのです。そういった場合には一門の力関係が影響したり、協会や審判部長の顔色を見ながら議論が進められたりすることもある。伊勢ヶ濱審判部長(元横綱・旭富士)時代は協会側の意向が露骨に反映されたように見える判断もあったが、今回については星勘定に基づく順当な判断になったようだ」(相撲ジャーナリスト)