菅義偉政権下ではコロナ担当相として連日メディアに登場し、現在は経産相を務める西村康稔氏。所属する安倍派では後継会長候補のひとりとして名前が挙がっている。そんな西村氏が2月上旬、自民党衆院議員の政治資金パーティーにゲストとして登壇した際に話したコロナに関する発言が波紋を呼んでいる。
西村氏は挨拶の冒頭で、昨年9月に経産相として行った海外出張について、こう発言した。
「その時のカンボジア、タイは衛生状態も良くない、マスクはしてない、近い距離で会議がある、食事もある、すぐ抱きつかれる。男性ですよ。そういう中ですね、感染をしてしまいまして」
西村氏はコロナ担当相時代から自身の抗体量を調べていたというが、昨年9月の感染後に抗体量を調べたところ、数値が上がっていたという。さらに感染から3か月経って再度検査した際には、感染直後より抗体量が上がっていたというのだ。それを西村氏は、こう結論づけている。
「私も10月から免疫力が下がってくるかなと思ったら、経産大臣の立場で、タイなどいろんな人と、海外でもマスクなしで会話することも食事することもあります。その中で、ちょっとずつブースト(追加免疫)を受けて、また抗体が上がっているということでありまして、4回目の(ワクチン)接種をもうちょっと待とうと」
パーティーの参加者はこう話す。
「この発言を聞いて、参加者からは『コロナ大臣で自粛の要請をしていた張本人が、マスクなし会食で抗体が上がったと発言するのはどうなの?』と疑問の声が上がっていました」
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう話す。
「新型コロナは無症状が多いという傾向がありますが、たとえばコロナ感染者とたくさん会っていたからといって、抗体が上がるという事実はありませんし、その人が新型コロナに感染しないという事実もありません。実際、今でも多くの人が感染をしています」
西村事務所に発言について聞くと「私の経験に基づく個人的考えを述べたものであり、この経験・考え方や抗体価を測ることへの支援などについては、政府のコロナ対策室にもお伝えしております」と回答。
科学的根拠もなしにこのような発言をする大臣が、国のコロナ政策の舵取りをしていたと思うと恐ろしい。
※週刊ポスト2023年3月10・17日号