カシメロ(左)と赤穂亮(右)の試合は白熱(撮影/飯岡拓也)

カシメロ(左)と赤穂亮(右)の試合は白熱(撮影/飯岡拓也)

──ボクシング選手からプロモーターへの道に進むきっかけは?

 現役プロボクサーだった頃から芸能事務所にも所属させていただいて、バラエティ番組にも出ていたんですけど、あまり向いてなかったですね。タレントというプレーヤーでずっといるのがしんどかったのかもしれません。何本も番組に出続けてもゴールが見えないというか。それだったら自分の世界を作っていきたいなという思いがあって、現役引退後にプロモーターの道に進むことにしました。

 やってみて思うのは、プロモーターという仕事は「ボクシングのおもしろさ」だけを考えるのではなく、全体を見渡せていないとダメだということ。前回と今回は同じ会場ですが、そうなるとボクシングファンだけでなく会場側も満足してくれるようなイベントにして、集客もしていかないといけません。そのバランスを取るのが大変でもあり、やりがいでもありますね。イベントが終わるまで常に不安ですけど(笑い)。ただ、その不安ってボクシングの試合と似ているんですよね。興行の成功と失敗も勝ち負けと同じで、どれだけ準備をしていても生身の選手同士のイベントなので何が起こるか予想ができないし、本番が終わるまでは結果が出ないんです。

──その意味では、前回大会でも、ドタキャンが続いていた”悪童”カシメロ選手が本当に韓国で試合をするのかどうかは、不安があったのではないでしょうか。

 そうですね、そこは私だけでなくボクシングファンのみなさんを含めた関係者の一番の不安だったと思います(笑い)。私がカシメロ選手に声を掛けたとき、彼は契約が切れたフリーの状態でイギリスに居たんです。減量にサウナを使用してはいけないというイギリスのボクシング団体のガイドラインに違反したとして出場を禁止されていた直後でした。

 冤罪ということが後にわかるものの、当時は地元のフィリピンでも、カシメロによる少女への暴行疑惑が取り沙汰されていたこともあり、本人はフィリピンに戻ると警察沙汰になることを危惧していました。なので一旦タイに滞在させて調整してもらいながら、TBのスタッフもタイに渡って興行の会場地だった韓国へ行くビザを取る準備を進めたのです。ちゃんと体重の推移もチェックして共有してもらうようにしていました。

 ビザを取るためにフィリピンには結局行かないといけなかったので、弁護士から暴行疑惑の冤罪をちゃんと確認したのちに、一緒にフィリピン入りしました。本人はフィリピン警察の事情をよく知っていたので何があるかわからないとナーバスになっていて、サングラスに帽子にマスク姿で周囲を警戒し、ミット打ちも滞在先のビジネスホテルの部屋の中でやるくらい一歩も外に出ませんでした。

 そのため、ビザ取得に関する事務作業はTBのスタッフがやったんです。カシメロ本人がそこに感動してくれまして。「体重管理やビザ取得からセキュリティなど、ここまで親切にしてくれたプロモーターはいままでいなかった」と嬉しい言葉を伝えてくれました。

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