いよいよ開幕するWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。侍ジャパンにとって、1次リーグの同ブロックで最大の難敵となるのが韓国代表である。
栗山英樹監督は大谷翔平を「二刀流」で起用すると見られており、登板予定がない日もDHでの出場が有力視されている。そんな大谷に対してまず韓国が講じると考えられる手が、「左腕エース」の投入だ。野球ジャーナリストの広尾晃氏が語る。
「伝統的に韓国はサウスポーのエースがチームを引っ張ってきた。日本の打線は韓国の左投手を苦手とする傾向があり、左打ちの大谷に対しても有効な対策になる可能性が高い。特に長身から投げ下ろすストレートとスライダーを武器とする左腕・具昌模(クチャンモ・26)などをぶつけてくる公算が大きい」
一方の投手・大谷は、エンゼルスから先発のみの起用を言明されており、1次ラウンドの大一番である韓国戦で登板するシナリオも想定される。その場合、韓国は“捨て身”の作戦で対抗してくる可能性があるという。スポーツ紙記者が言う。
「2009年のWBCでは、韓国の打者がインコースの際どい球に自ら足を出してデッドボールを狙いにいくシーンがありました。これには当時の日本の与田剛投手コーチが『あれはフェアじゃない』と苦言を呈しましたが、当時の韓国には“勝つためにはなりふり構っていられない”という雰囲気があった。大谷が先発なら、容易に打ち崩せないことは理解しているはずですし、今大会も塁に出るために死球を厭わず打席に向かってくることでしょう」
技術・戦術面だけではない。思い起こされるのが、2006、2009年大会で日本代表を引っ張ったイチローを巡る出来事だ。
「戦った相手が“向こう30年は日本に手は出せないな”という感じで勝ちたいと思う」
2006年の第1回大会前、イチローが発した言葉を自国への侮辱と受け取った韓国メディアは、壮絶なイチローバッシングを展開した。
「それまでのイチローは大谷と同じく“アジアの星”として韓国内で絶大な人気を誇っていましたが、『30年発言』を機にそのムードが一転、2006年大会の1次ラウンドでは相手投手が報復と受け取れる死球をイチローに与えました。
ほかにも準決勝の第5打席でイチローが打ち上げたファウルフライを捕球した韓国の三塁手が、ベンチに戻っているイチローの足元にボールを転がしたシーンがあり、米メディアは『スポーツマンシップにもとる』と非難しました」(前出・スポーツ紙記者)