北朝鮮の首都・平壌をはじめとする多くの都市で、裕福な家庭の子弟のために、数学や物理学、コンピューター、IT、楽器などの家庭教師が100万人規模に達していることが明らかになった。
主に有名大学に合格するために家庭教師を雇っているのだが、最近では子供たちが懲兵年齢達した際、入隊後に重労働やへき地での駐屯を避けるために、ダンスや音楽、楽器を習っているケースもあるという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
北朝鮮で家庭教師が初めて現れたのは「苦難の行軍」と呼ばれる国難の時代に遡る。苦難の行軍では、1994年から1998年にかけて発生した飢饉で、200万人(全人口の10%)が死亡したと推定される。
北朝鮮では原則的には家庭教師は違法だが、この飢饉の際、政府は小中高校の教師や大学の教授など教員への食糧配給を停止したことから、教員は裕福な家庭の子弟のための家庭教師となって生計を立てる以外には生き残る術がなかったからだ。
こうした事情があったため、当局は家庭教師を黙認。当初は外国語の家庭教師の需要が多く、その後、高校や大学の入学試験に合格するために、数学や物理などの教科の家庭教師の需要が高くなったという。
しかし、市場経済化した現在では、平壌や地方都市の党、軍、国有企業の幹部らの経済力がある家庭では、コンピューターやIT関連の家庭教師が引っ張りだこだ。
なぜならば、北朝鮮では小学校からコンピューターの授業があり、IT関連の成績が良ければ、飛び級して優遇され、さらにトップクラスになれば、著名な大学でITを学び、将来は軍や党機関、研究機関に入り、安定した生活を送れるからだ。