ビジネス

廃棄食品を飼料化しブランド豚肉を育てる 食品ロス削減に向けた新ビジネスモデルへの挑戦

提携する食品関連事業者から運ばれてきた食品廃棄物が相模原市の工場に搬入され、計量後にコンテナへ投入される。高圧洗浄機の水圧で粉々になり、徐々に液状化されていく

提携する食品関連事業者から運ばれてきた食品廃棄物が相模原市の工場に搬入され、計量後にコンテナへ投入される。高圧洗浄機の水圧で粉々になり、徐々に液状化されていく

 規格外品や賞味期限切れを理由に廃棄される食品は、日本国内で年間約522万トンも発生し、深刻な社会問題になっている。食品ロス削減のため、新たなビジネスモデルを確立させた企業の取り組みを追った。

 工場に次々と運ばれ、コンテナに山盛りになった青々としたキャベツや、艶やかなミカン、パンや麺など。これらはすべて、スーパーや食品工場などから出た廃棄食品だ。神奈川県相模原市の「日本フードエコロジーセンター」では、1日約35トンの廃棄食品を受け入れている。

 コンテナに投入された廃棄食品は細かく砕き、水分率70~80%のお粥状にする。そして、殺菌・発酵処理を経て豚用の飼料となり、専用のタンクローリーで契約養豚農家に運ばれる。飼料を食べた豚は、スーパーや百貨店でブランド豚肉として販売される。

 豚が食べることを前提としているので、食べ残しや分別が難しいもの、破砕処理できないものは受け入れできない。完成した飼料は野菜や果物などの栄養が豊富で、安全で健康的な豚肉の源となる。

国内外からの注目も高いビジネスモデル

 日本フードエコロジーセンターの取り組みは、2018年の「ジャパンSDGsアワード」でSDGs推進本部長賞(内閣総理大臣賞)を受賞し、国内外から多くの企業が視察に訪れる。代表取締役の高橋巧一氏は子どもの頃から環境問題に関心を抱き、2005年から事業を始めた。

「これまで食品廃棄物は自治体で焼却されましたが、そのためのコストや、焼却処理による二酸化炭素の発生などの問題を抱えていました。しかし、飼料化で処理コストが削減され、環境への負荷も抑えられます。処理のための設備はシンプルで低コストなので、ビジネスとしても成り立っています」(高橋氏)

 食品ロスが起きる一方で、紛争や経済危機で飢餓に苦しむ人が世界に約8億人いるとされる。フードシステムのアンバランスさを解決するためにも、日本フードエコロジーセンターのような取り組みが広がることが、持続可能なSDGs社会の構築につながるはずだ。

取材・文/常井宏平 撮影/岩田慶(fort)

※週刊ポスト2023年3月10・17日号

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン