過去の失敗を反面教師にできるか。大谷翔平、ラーズ・ヌートバー、吉田正尚というメジャーリーガーも合流し、いよいよ開幕が迫ってきたワールドベースボールクラシック(WBC)。3大会ぶりの優勝を目指す侍ジャパンだが、ソフトバンク、中日との強化試合では不安な点も見えてきた。
「4番の村上宗隆がソフトバンク、中日との4戦でまだ1安打しか打っていない。山川穂高、山田哲人もノーヒットと調子が上がらない。壮行試合と本戦は全く違うとはいえ、不安になるのは致し方ないでしょう。たとえ本番で不調が続いても、山川の代わりは岡本和真、山田の代わりは牧秀吾という絶好調の2人がいますが、では村上はどうするのか。
去年三冠王の村上といえども、もし1次ラウンド初戦の中国戦でノーヒットだったら、2戦目の韓国戦は打順を下げたり、他の選手との兼ね合い次第ではスタメン落ちさせたりすることもあるかもしれない。もし村上の不調が続き、山田や山川が復調したら『サード・岡本、ファースト・牧』も現実的に考えられる。過去の国際大会では、選手と“心中するかしないか”が大きな分かれ目となっている。どんな実績のある選手でも“聖域”にこだわるのはリスクがあります」(野球担当記者。以下同)
初めてオールプロで臨んだ2003年のアテネ五輪予選。2年連続パ・リーグ首位打者の小笠原道大は3番打者として期待されていたが、本番前のダイエーとの二軍戦、プロ野球選抜との壮行試合で8打数ノーヒット。初戦の中国戦でも4打数ノーヒットに終わると、長嶋茂雄監督は2戦目のチャイニーズタイペイ戦で8番に下げた。すると、小笠原は2本のタイムリーを放ち、打線も9点を取って爆発。3戦目の韓国戦も2対0で勝った日本は3連勝でアテネ行きを決めた。
「長嶋監督は“カンピューター”などと采配を揶揄されることもありましたが、1994年の中日との同率最終戦では槙原寛己、斎藤雅樹、桑田真澄の3本柱を投入して優勝を決めるなど、短期決戦での決断力は見事です。アテネ予選でも小笠原の3番にこだわっていたら、打線が湿って勝負はどう転んだかわからない。どんな大打者でも不振なら、短期決戦では打順を落とすことも必要なのでしょう」