古今東西の名画約360点を紹介する絵画図鑑『小学館の図鑑NEOアート 図解 はじめての絵画』が発売即重版、早くも10万部突破で話題になっている。子ども向けとあなどるなかれ。名画がユニークな切り口で解説され、謎解き感覚で鑑賞のポイントを押さえていけるのだ。頭をやわらかくして「絵画の世界」へ飛びこもう。【前後編の前編。後編を読む】
『モナ・リザ』はここがスゴい!
【レオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』(1503~1505年頃)
世界で最も有名な絵画レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』(1503~1505年頃)。この女性は誰なのか。微笑んでいるような、いないような、このあいまいな表情に隠された心情は500年以上の謎として語り継がれている。名画の誉れを集め続けるこの作品は、どこがスゴイのか。
【1】線で描かないから不思議な表情になった
「モナ・リザ」に描かれた女性の表情があいまいに見えるのは、女性の顔の輪郭を描くために“線”が用いられていないから。ダ・ヴィンチは実際の顔にはない線を用いず、“明るさ”や“暗さ”“色彩”を変化させることよって描いている。この描き方では、はっきりとした表情を表わすのは難しく、あいまいで不思議な表情に見える。
【2】途切れることなく変化し続ける自然の法則
【レオナルド・ダ・ヴィンチ『流れる水の研究(部分図)』(1509~1511年頃)】
「モナ・リザ」の背景には、水が川を流れたり空で水蒸気になったりして変化し続けている様子が描かれている。ぐるぐると渦巻く水の流れをスケッチするなど、ダ・ヴィンチは水流を観察・研究して描くことで「自然は途切れることなく変化し続ける」という法則を発見し、風景の中に描いた。
【3】人と自然は同じ法則で成立していることを伝えた
【レオナルド・ダ・ヴィンチ『人体均衡図(ウィトルウィウス的人体)』(1490年頃)】
【2】で発見した自然の法則に基づいて、ダ・ヴィンチは明暗や色彩を途切れることなく変化させて女性を描いている。女性と背景の風景を同じ法則で描くことによって、絵全体で、人と自然が同じ法則で成立していることを伝えようとしたのだろう。この絵では、人と、自然を含めた世界そのものが同じ法則で成り立っている考えをスケッチした。
【4】聖母とは違い人の心の動きが描かれている
【マザッチョ『「聖ジョヴェナーレ祭壇図」王座と聖母子と二天使(部分図)』(1422年)】
今から500年以上前の「モナ・リザ」が描かれた時代では、この絵のように幼いキリストを抱いた聖母マリアは厳かで堂々としているが、心の動きや表情は感じられない。「モナ・リザ」のモデルは不明だが、いかめしい聖母とは違って人の自然な心の動きが伝わってくる。