降板報道から2週間、「『ワイドナショー』卒業」が正式に発表となった松本人志(59才)。なぜこのタイミングで降板することになったのか? 放送作家の山田美保子さんが分析する。
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フジテレビは6日、4月改編の記者会見でダウンタウンの松本人志が3月いっぱいで『ワイドナショー』を卒業すると正式発表した。
予兆はあった。2022年4月、松本が隔週出演となったときも「すわ降板か」と一部で騒がれた。2019年11月より『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送テレビ)の局長に就任したことで“ワイドナ”とのスケジュール調整が難しくなったからだと聞いているが、この頃から「松本さんはいずれ降板するつもりなのではないか」「“ワイドナ”でのテンションが保たれていない気がする」などと指摘するテレビスタッフの声が聞かれたものである。
そして今回の降板は、中居正広とタッグを組む『まつもtoなかい』が4月からスタートするタイミング。松本は出演発表にあたり、「『ワイドナショー』を辞めてまでの意気込みで挑む、ということです」とコメントしているが、“ワイドナ”の明確な降板理由はまだ明かしていない。
そもそも“ワイドナ”のコンセプトは冒頭のナレーションでも説明されているように、「ふだんスクープされる側の芸能人が、個人の見解を話しに集まるワイドショー番組」。過去に担当していたスタッフの筆頭として『ダウンタウンなう』や『人志松本のすべらない話』『IPPONグランプリ』などのCPを務める中嶋優一氏の名前があることでもわかるように、“ワイドナ”は、情報番組ではなくバラエティ番組なのである。そこに、多くのワイドショーを手がけた塩田千尋氏(退社)の人脈やノウハウが加わり、カタチになったと筆者は理解している。だから生ではなく収録番組でも全く問題はなかったのである。
もともとサンジャポとは異なる立ち位置
一方、裏を張る『サンデージャポン』(TBS系)は開始当初から生放送。日曜の午前10時からと同じ時間帯の両番組は、いつしかライバル関係のように位置付けられているが、そもそも立ち位置は全く異なっているのである。
たとえば土曜日に何か大きなニュースが起きても、いわゆる“生対応”になることはなく、スポーツ紙の接写などを利用して、ナレーションだけで扱う“ワイドナ”に対し、”サンジャポ“はとことん、最新情報にこだわる。
“サンジャポ・ファミリー”の末席に居る筆者は、MCの爆笑問題・田中裕二から「まずは最新情報があるそうですね」と毎回、振られてきた。たとえば同日早朝、『サンデーLIVE!!』(テレビ朝日系)でMCの東山紀之が、退所する後輩アーティストにエールを贈ったことも“最新情報”。“ワイドナ”はスケジュール上、そこには触れられない。
現在の“ワイドな”のスタッフや一部の出演者の中には最新情報について触れられないことや話せないことを残念に感じている者もいるのかもしれない。が、松本はそこまでこだわっていなかったのではないか。
一度だけ生放送になったのは、2019年7月21日、いわゆる“闇営業”問題で前日に謝罪会見をした宮迫博之とロンドンブーツ1号2号の田村亮について松本や東野が語ったときだけ。それは異例中の異例のことだった。
「キリトリ記事」への不満も
果たして、この一年ほど松本がこだわったのは、“キリトリ記事”への禁止令。直筆で記したプレートを自身が着くテーブルの前に提げ、コメントを切り取ってネットニュースにするメディアを批判していた。
ネット世論の一部には「でも“ワイドナ”も切り取っていますよね」という声も挙がっているが、毎回、松本が放つ複数のコメントが切り取られてネット記事になり、そこにコメントが多数付けられることにウンザリする彼の気持ちはわかるような気がする。そうした記事の多くは、スタジオの空気や他の出演者のコメントなどを省き、松本のコメントの一部だけが文字通り切り取られ、短くまとめられている。
実はもう何年も前から多くのスポーツ紙やネットニュースメディアの記者は交代制でテレビ番組をチェックしており、担当した局と時間帯に取り上げるべきコメントがあれば、すぐに記事化し、アップしているのだ。他社も同じことをしているので、そこはスピード勝負。因って、本当に切り取っただけの記事もあれば、なかには、誤った解釈がされているケースもある。
こうした裏事情を松本がどこまで知っているかは不明だが、「コタツ記事」とも呼ばれる“キリトリ記事”がなくならないことに対し、不満が募っていったことは伝わってきた。