史上最強「侍ジャパン」の活躍が期待されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。大谷翔平(エンゼルス)、村上宗隆(ヤクルト)の豪快弾、ダルビッシュ有(パドレス)、佐々木朗希(ロッテ)の快投が日本列島を熱狂の渦に巻き込みそうだが、スポーツ観戦による過度な興奮が、健康状態に思わぬ影響を及ぼすこともあるという。
いまから半世紀ほど前、テレビでプロレス中継を観ていた高齢者が心臓麻痺や脳出血を起こし、相次いで亡くなる事故が起きた。当時の新聞は「レスラーの流血シーンが“ショック死”を招いた」と報じたが、真相は定かではない。
ただし、近年の事例でもこんな報告がある。2006年に行なわれたドイツW杯では、同国の研究チームが「試合が国民に与えた影響」を調査。ドイツ代表戦の当日、同国男性の心疾患発症リスクは通常の3倍を超えたという。
日本歯科大学附属病院(内科)臨床教授で、近著に『血圧が下がる人は「これ」だけやっている』(アスコム)がある渡辺尚彦医師が語る。
「昨年開催されたカタールW杯の日本戦では、比較的早い時間の試合を観戦した後も、夜中まで血圧の高い状態が続いている方が多く見られました。お酒を飲みながら観戦した後、興奮が冷めないまま入浴するケースなどは要注意です」
贔屓の選手の活躍にボルテージが上がるのも無理はない。ましてや世界を舞台にした試合であればなおさらだ。しかし──。
「ボクシングやプロレスなどの格闘技に比べ、長丁場の野球やサッカーは比較的落ち着いて観戦できるスポーツですが、『おおっ!』『やった!』などと大声を出すと、血圧は瞬時に上がります。急に立ち上がるのも危険。ハイタッチしようと立ち上がった瞬間、血圧が急低下する起立性低血圧を起こし、失神や立ち眩みで転倒するリスクもあります」(渡辺医師)
興奮により、血圧が一定値(収縮期血圧170mmHg)以上の状態が続くと、最悪の場合は心筋梗塞や脳卒中など重篤な症状に繋がることもあるという。