WBCが盛り上がっているが、そんななかテレビ界のスポーツ番組事情に変化が訪れている。スポーツバラエティのゴールデンタイムからの“撤退”が相次いでいるのだ。かつては定番コンテンツの1つだったスポーツバラエティは、もう「限界」なのか――。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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連日、各局の4月期改編が発表され、番組の終了や誕生にさまざまな声が飛び交っています。その中でも象徴的だったのが、スポーツバラエティをめぐる2つの動き。
まずフジテレビが『ジャンクSPORTS』を日曜ゴールデンタイムの19時台から土曜夕方の17時台に移動し、さらに放送時間を30分に短縮することを発表しました。次にTBSもの『炎の体育会TV』を土曜ゴールデンタイムにあたる19時台のレギュラー放送を終了。今後は世界大会が開催されるときなどに不定期特番化することを明かしました。
注目すべきは今春の改編で「民放ゴールデンタイムでレギュラー放送されるスポーツバラエティが0本になる」こと。広い意味でスポーツドキュメンタリーを加えたとしても、「スポーツ関連番組は土日の日中や深夜の番組がいくつかあるのみ」という状態になりそうです。
令和の今、スポーツバラエティ、引いてはスポーツ関連番組というジャンルは、もう限界なのでしょうか。もしそうならば、どんな理由があるのでしょうか。
視聴率低迷もオリンピックが支えに
『ジャンクSPORTS』の移動・縮小は、視聴率の低迷によるところが大きいのは間違いないでしょう。同番組は2000年4月に深夜帯でスタートしたものの、2004年1月からゴールデンタイムに移動し、2010年3月まで放送。その後、不定期特番化して放送を続けたあと、2018年1月にレギュラー放送を再開しましたが、視聴率は低迷し続け、東京オリンピック終了後は買い物やグルメなどの企画でテコ入れを図ったものの、上向くことはありませんでした。
一方、『炎の体育会TV』はレギュラー放送終了の理由に「東京オリンピックが終わったこと」を挙げていましたが、やはり裏番組と比べたとき視聴率の低迷は否めません。また、もともとTBSはスポーツ関連番組に力を入れてきたテレビ局ですが、2011年11月のスタートから約11年半にわたって放送したことで、「一定の役割を終えた」というところもあるのでしょう。
その他のスポーツバラエティに注目すると、1980年代に人気を博した『ビートたけしのスポーツ大将』(テレビ朝日系)は東京オリンピックに向けて2017年11月に27年ぶりの復活を果たしたものの、わずか10か月後の2018年9月に終了。当時は「ビートたけしさんが2019年の大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)に出演するから」という理由が報じられましたが、曜日移動せずに終了させたことが視聴率の低迷を物語っています。
また、同時期の2017年4月から放送されていた『さまスポ』(テレビ東京系)も、同じ2018年9月で終了しました。2010年代後半からスポーツバラエティをめぐる状況は苦しくなっていたものの、「東京オリンピックがあるから」という理由で何とか持ちこたえていたのです。
しかし、その間も各局のテレビマンたちは、「視聴率低迷の理由はスポーツバラエティの需要が落ちているからではないか」と感じていました。
視聴者の世界大会至上主義が加速
現在の視聴者が求めているのは、スポーツはバラエティよりも、真剣勝負の国際試合。特にテレビマンたちにとって重要な視聴率が上がるのは、日本代表が各国代表と戦う世界大会です。
実際、野球のレギュラーシーズンはゴールデンタイムでほとんど放送されなくなった一方で、現在開催中のWBCは強化試合から高視聴率を記録。このような現象は、野球のWBCやサッカーのワールドカップが顕著ですが、国際大会のテレビ中継は各競技に広がっています。
これまで放送されてきたバレーボール、陸上、水泳、ゴルフ、フィギュアスケートに加えて、柔道、卓球、体操、バドミントン、ラグビー、バスケットボールなど、視聴者の注目を集める世界大会の中継は増える一方。日本人選手の活躍に合わせて、各局がカバーする競技を競い合うように広げています。