池田勇人氏、宮沢喜一氏に続いて広島県が輩出した戦後3人目の総理大臣である岸田文雄・首相。岸田首相は、G7の首脳全員を初めて原爆被爆地ヒロシマに招く今年5月のサミットに向けて、「広島アピール」を絶賛展開中だ。
ところが、本誌・週刊ポスト記者が現地で取材を進めていくと、地元で反戦活動をしている人々からは岸田首相の「広島愛」に対して疑問を抱く声が上がっていることが分かった。「核政策を知りたい広島若者有権者の会 (カクワカ広島) 」の安彦恵里香氏はこう語る。
「岸田さんは、『核なき世界』を言っていますが、日本政府は核兵器廃絶条約には賛成していません。しかも、岸田さんは広島選出の総理なのに防衛費倍増と敵基地攻撃能力の保持を推進するという、自分が言い出した『核なき世界』からかけ離れたことをしていることに恥ずかしさはないのでしょうか。
本格的な議論を避けて、広島という平和のブランドを利用しようとしている岸田さんにはうんざりしています。今回のサミットも、市民はおいてけぼりにされていると感じます。
また、米国の大統領は常に核のボタンと一緒に行動する。岸田さんが外相時代のオバマ大統領の広島訪問の時もそうでしたが、今回もまた、核のボタンが広島の平和公園に持ち込まれるのです」
自らも被爆者で、自身も被爆体験を広める活動をしている80代女性はこう話した。
「防衛費を2倍にする、敵基地攻撃能力の保持を認めるなど、私たち広島の人間からしたら、平和を唱えなければいけない広島から選出された総理が、まったく信じられないことをしている。それについては、本当に悔しい思いですよ。
核兵器についても、核共有などの話まで出てきて、唯一の被爆国である日本が、何ということになっているのか。岸田さんがやっていることに対して、私は絶対に反対です。でも、今はサミットで被爆者団体協議会も協力するということになっているので、サミットを見守るしかないという状況にもどかしさを感じています。
ただ、いろいろ考えることはあります。本当に、このままでいいのかと。声を上げるべきではないかと。今はいろんなことが戦前のような雰囲気なんだと感じています」
岸田首相は地元の声をどう聞くのだろうか。