文学座出身で、ドラマ『Gメン’75』(TBS系)、映画『蒲田行進曲』(深作欣二監督)などで活躍してきた俳優・原田大二郎さん。78歳にして現役で舞台に立ち続け、多くの演劇ファンを魅了している。3月16日からは、原田さんが演出・出演する舞台『ちっちゃな星の王子さま』も始まる。その稽古現場には、舞台作品を演出することが嬉しくてたまらないといった表情の原田さんがいた。そんな彼の、役者としての原点、そして現在地とは──。【前後編の前編】
「もちろんこれまで50年以上、役者としてのキャリアを積み上げてきたわけだけど、演出の経験もわりとあるんですよ。2003年に旗揚げした伊東ミュージカル劇団という市民劇団で2013年から『三浦按針-青い目のサムライ-』、そして2019年に『伊東祐親物語-八重姫の涙-』の演出を担当しました。
どちらも脚本から作り上げ、そして『三浦按針』では、僕自身も役者として出演しました。市民劇団なんだけど、稽古を重ねるごとにぐんぐん芝居が良くなっていく。演出することの喜びというか、楽しさに気づかせて頂いた経験でした」
3月16日から始まる『ちっちゃな星の王子さま』も脚本・演出・出演だ。主演は原田さんの長男・原田虎太郎さん(48)が務める。この芝居の計画がスタートした裏には原田親子ならではの知られざる事情がある。
「虎太郎は生まれた時から内蔵の病気を持っていて、これまで何度も手術を受けてきました。そうしたことがあって学校も休みがちになり、いじめられることもありました。病気のおかげで生死の境を何度もくぐり抜けるような人生だったのですが、くじけることなく生き抜いてくれた。親として彼の人生から学ぶことも多く、ひとりの人間として感謝もしています。
最近、虎太郎は村山竜平氏が主宰する演劇集団『周』の公演に役者として出演する機会を得て、芝居の面白さに目覚めたみたいです。ちょっと親バカと言われても仕方ないけど、そんな息子の姿を見ていると、親として何かしてやりたいなっていう気持ちになってきた。村山さんから『大ちゃん、コロナもだんだん収まってきたことだし、なにか面白いことをやろうよ』と声がかかり、虎太郎の親友で女優の和泉妃夏ちゃんと、旧知の川端槇二(劇団NLT主宰)などが集まって、今回の『ちっちゃな星の王子さま』が生まれたというわけです」
同作は不朽の名作、サン・テグジュペリの作品をベースに原田さんが大きくアレンジを加えた。歌や踊りが満載の楽しい舞台作品へと生まれ変わっている。
「サン・テグジュペリ原作のタイトルは“Le Petit Prince”、つまり“ちいさな王子さま”なんです。これが日本では“星の王子さま”として翻訳されました。今回、僕はその両方を活かして『ちっちゃな星の王子さま』としました」