暴力団といえば違法行為もいとわない何でもありの組織──そう認識している人が多いだろうが、令和の暴力団はそうもいかないようだ。関東に本拠地を構える広域暴力団が傘下組織に出した通達文の内容が、組員に一般企業さながらコンプライアンス遵守を促していると話題になっている。
この広域暴力団が〈通達事項〉として傘下組織に配った複数枚の紙には、新入社員が研修で学ぶような“社会人としての心得”に似た内容が記されている。(以下、〈 〉内は原文ママ)
〈会員同士のお金の貸借は厳禁とする〉
〈定例幹部会又は会合が開催されている時は携帯電話の呼び出し音はマナーモードに設定するか電源をオフにしておいて下さい〉
また、幹部会が開かれる施設近隣のサービスエリアで集まることなども〈他の利用者に御迷惑が掛かり今迄何度か当局に通報が入る事態になっておりますのでその様な行為はお止め下さい〉とも記されている。組員は幹部会でトップに挨拶した後は、廊下などで立ち話をせず、速やかに席に戻らなければならないという。
暴力団特有の“心得”も。今年2月に六代目山口組の幹部3人らが親族など他人名義のETCを使って高速道路を利用したことで逮捕されたが、これについても言及。暴力団員は暴排条例からクレジットカードを作れず、ETCカードも取得できない。そのため、高速道路を利用する場合は現金払いのみだ。この組織は丁寧に、首都高速のETCでなければ乗れない料金所を別紙にまとめて記載し、〈私達にも起こり得る事件で御座いますので注意して下さい〉とETCの利用自粛を求めている。