1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動している。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、海外競馬へ挑戦についてお届けする。
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先月25日のサウジカップデーは、僕も深夜のグリーンチャンネルに釘付けで応援しました。メインのGIサウジカップ、パンサラッサの逃げにはしびれました。1着賞金が13億円! なんとも夢のあるレースですよね。
あそこに辿り着くまでは、これまでの経験や綿密な調査、そしてそれに合わせた馬の調整など大変だったと思います。関係者の方々には心よりお祝いを申し上げたいと思います。他にも福永祐一騎手の異国でのラストランや、僕よりも年上の柴田善臣騎手のダートスプリントへの挑戦など、いろいろな意味でとても刺激を受けました。
僕はジョッキー時代、凱旋門賞に4回騎乗させていただきました。エルコンドルパサーはずっとフランスに滞在していたので、僕の方が日本での競馬の合間に出かけていきましたし、2度の前哨戦にも騎乗。香港にも1994年に行かせてもらって以来、10回以上騎乗させていただきました。
しかし、近年日本馬が何頭も出かけていくドバイ(UAE)には一度も行っていません。お手馬が遠征するという状況になかった。
海外競馬への憧れは騎手になる前、競馬学校時代からありました。今のようにネットで簡単に海外のレース映像が見られる時代ではなく、月に1回だけ出ている海外競馬のVHSビデオを買って、何度も何度も見ていました。外国の馬やジョッキー、そして緑の中にある競馬場を見て、いつかこんなところへ行きたいと思っていましたね。
1995年に森秀行厩舎のフジヤマケンザンで、日本馬として初めて海外の重賞を勝ちました。当時はそれほど大きなニュースにはなりませんでしたが、大きな手ごたえを掴みました。あの時は本当にうれしかった。
今後調教師としては、チャンスがあったら海外のレースにも参戦していきたいと思っています。やはり高額賞金は魅力。僕を信頼して預けていただいている馬主さんに少しでも多く稼いでもらいたい。