コロナ禍で病院に行くのが億劫になり、医師から「同じお薬でいいですね」と処方された薬を漫然と飲み続けてはいないだろうか。それでは「多剤併用」からは抜け出せない。
かかりつけ医は1人でいい
3月10日に発売された『医者が飲まない薬』(宝島社)がベストセラーになっている。
医療ジャーナリストの鳥集徹氏が5人の現役医師にインタビューを行ない、患者に処方する立場の医師が実は様々な薬を「飲まなくていい」と考えている実態を記した。読者からの反響は非常に大きいという。
鳥集氏が語る。
「ありがたいことに“目から鱗だった”“大切な勉強になった”という感想や、医師の方からも学びがあったという声をいただいております。コロナ禍では感染防止のために医療が様々なかたちで社会に深く介入しました。しかし、専門家の言う通りにしても結局は収束しなかった。
これは特別なことではなく常日頃から同じです。歳を取って不調を感じて病院を受診するたびに薬が増える。その薬の副作用に気付かず、医師が症状を抑えるため薬を増やす悪循環に陥る──そんなケースがよく見られます。さらにコロナ禍の受診控えで持病を悪化させた高齢者が多く、結果として薬の量が増えてしまう。今こそ、医療を受けるには何が大事かを見直すべきだと思いました」
新著のテーマに「医者が飲まない薬」を選んだのは、医学界と薬の関係性への疑問を抱いていたからでもある。
「血圧が高いとすぐに降圧剤が処方されますが、本来の目的は血圧を下げることではありません。心血管病ひいては死亡リスクを下げるためですが、思うほど大きな恩恵があるわけではありません。また、新しいタイプの薬ほど安全で有効と思わされていますが、高い新薬を売りたい製薬会社のマーケティングの成果による面も大きいのです」