元AKB48の前田敦子(31)が、3月24日からWOWOWで放送される連続ドラマ『ウツボラ』に出演する。原作は、2008年に発売された同名の人気漫画。幾重にも張り巡らされた謎と官能的な描写ゆえ「映像化は難しい」とされてきた作品だ。日本中を熱狂させた元アイドルが、この難しい作品への挑戦によって、いよいよ「女優」として本格的に脱皮することとなりそうだ。映画評論家の秋本鉄次氏が言う。
「前田は映画『イニシエーション・ラブ』や『さよなら歌舞伎町』などでラブシーンを演じたことはありました。ただアイドル出身ということもあって肌の露出や俳優との直接的な接触シーンが映ることは少なかった。しかし、今回は彼女自身がインタビューで語っていますが、元々原作の大ファンであるようです。また『30代で出逢えて良かった』という発言からは脱アイドルとして大人な演技にも積極的に挑戦していく気概を感じました」
『ウツボラ』の物語はこうだ。ある日、美少女・朱(前田)が謎の死を遂げる。そして彼女と入れ替わるように「双子の妹」を名乗る桜(前田、二役)が人気作家・溝呂木(北村有起哉)の前に現われる。実は溝呂木は朱が書いた小説を盗用しており、それを知る桜に追い詰められていく──というサスペンス要素のあるストーリー。
前田は「一人二役」でかつ妖艶な魅力がある女性という難役だ。それゆえ、秋本氏はこのドラマで「新たなファン層の拡大」や「新境地の開拓」ができるのではないかと見ている。
「WOWOW製作のドラマは地上波と違ってシリアスな描写やラブシーンなども映画のようにしっかり作り込みます。2015年の『荒地の恋』では鈴木京香がハードなラブシーンを熱演しました、同年の『硝子の葦』では“清純派”のイメージだった相武紗季もそうしたシーンに挑戦した。撮影に臨む女優の覚悟も強く、2018年の『連続ドラマW ダブル・ファンタジー』で水川あさみは『“どの角度が一番官能的に見えるのか”とか“顔をこう上げるとセクシーに見える”などアクションシーンを撮るようにラブシーンに挑んだ』と明かしています。
前田はどうしても元国民的アイドルというイメージが強いですが、もう30代で私生活では母でもある。演技の幅も確実に広がっているはずです。今作で彼女が振り切った演技を魅せることができれば、男性ファンだけでなく自身と同世代以上の女性ファンも増えるのではないでしょうか。もう“あっちゃん”と呼ばれないような新境地を見せてほしいです」(秋本氏)
女優としても着実にキャリアを気づいてきた前田。秋本氏が言うように今作で彼女の新たな一面を見られるのか、放送が楽しみだ。
※週刊ポスト2023年3月31日号