滑舌といい、目の鋭さといい、いやいや、強烈ですよ、香乃子ママ。低い声で発せられる暴言も腹に響いて、迫力。ヒロインが物静かでふわっと無抵抗な分、とりすました香乃子の強さが物語を締めていく。
思えば、過去にも強烈ないびり役、いじめ役が、作品を盛り上げた例はいろいろあった。古くは、「必殺シリーズ」の主人公・中村主水(藤田まこと)の姑(菅井きん)と嫁(白木万里)のコンビ。二人は、後継ぎがなかなか授からない婿養子の主水に、「これだから婿殿は出世できない」「種なしカボチャ」などと嫌味を連発。姑の名前が「せん」で嫁が「りつ」、 二人合わせて「戦慄!?」という日本のテレビ史に残るいびり役となった。
この他、『家なき子』で安達祐実に冷たく当たった小柳ルミ子、『イグアナの娘』で娘(菅野美穂)を「ガラパゴスのイグアナにしか見えない」と言い切った川島なお美、『火垂るの墓』で食糧難の戦時に引き取った兄妹に対する態度で賛否を巻き起こした松嶋菜々子も忘れがたい。
ライバルや犯人とは違う形で主人公と対立するいびり役には、コミカル、陰湿、粗暴、さまざまなタイプがある。観る人に「憎たらしい!!」「でも、出てこないとつまらない!」と思われるのは、キャラクターを作り上げる俳優の力量というもの。香乃子には、令和の「戦慄」の気配を感じた。いい味出してます。