NHKの連続テレビ小説『舞いあがれ!』で存在感を発揮しているのが山口紗弥加(43才)だ。その山口は、朝ドラとは真逆の「いびり役」でも話題を集めている。山口の演技についてコラムニストのペリー荻野さんが解説する。
* * *
いよいよ大詰めとなってきた朝ドラ『舞いあがれ!』。スタート当初は、てっきりヒロインの舞(福原遥)が、パイロットになる話かと思ったが、今は地元東大阪の工場の技術で新製品を開発しようと奮闘中だ。
その大事なパートナーとなっているのが、御園(山口紗弥加)である。新聞記者だった御園は、取材を通じて舞と知り合い、彼女の志に共鳴して、ともに事業を始める。思ったことをズバリと発言する行動派の彼女は、子育てと会社の仕事、さらには「空飛ぶクルマ」の開発に取り組む先輩を応援する舞に「忙しいんだから、ほどほどにね」と気遣いも見せる。頼りになる存在だ。
その山口が、17日に公開された映画『わたしの幸せな結婚』では、まったく別の顔を見せている。
舞台は大正ロマンを思わせる時代。特殊な宿命を持つ名家に生まれながら、実母を亡くし、能力を持たないために家族に虐げられ、隠れるように生きてきたヒロイン斎森美世(今田美桜)が、政略結婚で冷酷な美貌の陸軍隊長・久堂清霞(くどうきよか・目黒蓮)と出会う。
『舞いあがれ!』で舞の恋人役だった目黒蓮が、ここでは長い銀髪をなびかせる軍人役というのも興味深い。孤独だった二人の純愛、帝都を襲う不穏な災いと戦うアクション、異能を巡るファンタジー、さまざまな要素が盛りだくさんのこの映画を観て、宝くじや「GU」のCMなど、いつも元気な印象の今田が、自己主張ゼロのおとなしい女性を演じていたのは新鮮だった。
その美世の存在を際立たせているのは、山口紗弥加演じる美世の継母・香乃子だ。実母にそっくりで控えめな美世が目障りな香乃子は、自分が生んだ香耶(高石あかり)とともに美世を使用人同様に扱い、「この世から消えればいいのよ」と言い放つ。そして、次第に暴力的に…。