若者や外国人観光客が戻り、コロナ禍前の景色を取り戻しつつある新宿・歌舞伎町。街を歩くと、「路上キャッチ」を禁じるアナウンスを絶え間なく耳にし、警備員も常に目を光らせている。だが欲望が渦巻く街での落とし穴は巧妙化するばかりだ。
3月3日、新宿署は風営法違反(無許可での接待行為)の疑いで専門学校生・畠叶夢容疑者(20)を逮捕した。今年2月、畠容疑者はマッチングアプリで知り合った20代男性と食事にいき、“いきつけのダーツバーに行こう”と誘い、歌舞伎町のバー『GRAND?H』に入った。説明された店のシステムは「1人1時間5000円飲み放題」。男性の財布には1万5000円ほどあったといい、女性の分まで支払える計算──だが、ここで事件が起きる。社会部記者が語る。
「店員がトランプを持ってきたところ、畠容疑者が男性に“ゲームをしよう”と提案。負けたほうが“ショットの酒を飲む”というルールでした。2人は1時間ほどで計100杯近くのショットを空け、ほろ酔い気分で男性が会計を頼むと、40万円の請求が。男性が店員に問い合わせると、『ショットは飲み放題に含まれない』と。持ち合わせが足りなかった男性は店員に引き連れられ、銀行口座からなけなしの現金数万円を引き出した。これでも40万円にはほど遠かったので、店員は『キャッシュカードでキャッシングして金を借りろ』と指示。男性はキャッシングした現金十数万円を渡して逃げようとしたものの、外で見張りをしていた別の店員2人に捕まり、殴る蹴るの暴行を受けた末、スマホと財布を奪われた」
男性が歌舞伎町の交番に駆け込み、警官とともに店に向かっていると驚きの光景が。畠容疑者が別の男性と同じコンビニから出てきたのだ。警官が事情を聞くと、この男性も同様にお金をぼったくられたことを証言。畠容疑者は任意同行を求められる。
「その後の捜査で、畠容疑者が『GRAND?H』の店員で店と結託して、ぼったくり行為を行なっていたことが発覚し、逮捕されました。畠容疑者は店員から、『店員であることを隠して男性を店に連れてこい』と指示を受けていたことを明かし、男性が支払った額の25%を報酬として受け取っていたといいます。警察は、畠容疑者が高額な報酬を受け取っていたことから逮捕に踏み切ったと見られています。男性に暴行した店員も既に逮捕されていて、ぼったくり手法の実態解明が進められています」(同前)