日本中を感動の渦に巻き込んだ、野球日本代表・侍ジャパンのWBC世界一奪還。その栄光の瞬間は、米国・マイアミのローデンポ・パークスタジアムでも、多くの日本人観客が目撃した。その一人が、脱サラ・バツイチ48歳の元スポーツ紙芸能記者・瀬津真也。小学生の娘二人を両親に預けての弾丸追っかけ旅行で、現地でしか感じられない感情や様子を、緊急ルポでお届けする。【前後編の後編。前編から読む】
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《現地時間21日:決勝米国戦》
当然、前夜の90%の日本人が、ラスト大一番のスタジアムにも戻ってきた。ニュージャージー州在住のある日本人夫婦は、「1試合のつもりが、感激すぎて帰りの便をリスケして、今日も来ちゃいました」と照れ笑い。野球好きの夫が妻にうかがいを立てるまでもなく、妻から「今からチケット取るよ。一生後悔しちゃう」と、背中を押されたという。
ただし、相手は地元の米国代表。前夜以上に肩身は狭い。客席の90%は米国人客が占拠。内野席やバックネット裏の日の丸ファンは、前夜とは全く違い、完全に埋もれた。私も一人立ち続けての声援を送るが、是非もなし。常に球場全体を揺るがす大U.S.A.コールの中では、いとも簡単にかき消されてしまった。
もはや、しっかりと固まれていたのは、左翼立ち見席に陣取るNPB(日本野球機構)公認の「侍ジャパン応援団」たちだけ。その鳴り物と選手個々の応援歌による日本独自の応援スタイルだ。
「それにしても、リュックやバッグはもちろん、自撮り棒すら持込禁止のスタジアムに、彼らはどうやって太鼓やトランペットを持ち込んだのか」
ふと、そんな思いにもふけられるほどに、この日はもう、最初から負ける気がしなかった。完全アウェーにもかかわらず、だ。