二〇二〇年の大ヒット映画『鬼滅の刃 無限列車編』のラストで主題歌「炎」が流れた際、多くの観客が感動することになるのだが、それはLiSAによるヴォーカルの力によるところも大きかった。作詞作曲を担った梶浦由記氏に、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がその魅力を聞いた。
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梶浦:LiSAさんは素晴らしかったですね。言葉の表現力が素晴らしい。歌い手さんには、はじめから歌い方を自身で演出するタイプと演出しないタイプがいます。この言葉をどうやって歌うとか、このロングトーンはここまで伸ばすとか、自分で全部決めてくる方とまったく決めてこない方。
どちらか片方が正しいというわけではないんです。決めていない方には、こちらが決めてあげればいいだけなんですから。「そこの《か》っていう音はもっと強く歌って」とか「最後のロングトーンはもっと長く伸ばして」とか、伸ばしきれないんだったら、「じゃあ、このへんできれいに切ってみよう」とか。こちらで演出をつけて、一文字一文字を録っていくやりかたをします。LiSAさんは完全に自分で演出してくる方。その演出が完璧で、よくこれだけ突き詰めて歌を作ってくるなって、びっくりしました。
はじめから完璧でしたね。びっくりするぐらいはじめから素晴らしくて。素歌を聴くと、ひと言ひと言が、どれだけちゃんと演出しているかって、すごくよくわかるんです。一つの言葉をどう歌うかっていうことを、ひと言ひと言ちゃんと全部考えて歌っているから、あんなに歌詞が聴こえてくるわけです。
――特に「炎」はバラード調なので、歌詞が歌にちゃんと乗っててほしいですからね。
梶浦:バラードって、何も考えずにきれいにふわっと歌っちゃうと、さーっと通り過ぎて、何も残らないんです。でも、あれだけ一つひとつの言葉を大事に歌っていただいて、素晴らしい収録でした。