3月21日、ウクライナを電撃訪問した岸田文雄・首相。外遊先のインドから予定を変更してウクライナに入った今回のミッションは政府内で極秘に進められた。
とくに読売新聞のスクープで2月のウクライナ訪問計画をつぶされるなど、これまで3回も訪問を断念しただけに、情報統制に気を使っていた。
そのため政府は政府専用機とは別に小型ジェット機をチャーターし、首相は日印首脳会談を終えると同行記者をインドに置き去りにして少数の側近と小型ジェットで経由地のポーランドへ飛び、そこから鉄道でキーウに入るルートを取った。インドの同行記者には事前に「今回はウクライナには行かない」と説明され、一部のネットニュースでは「岸田首相 3月31日にウクライナに出発」というニセ情報まで流れた。
しかし、米国のバイデン大統領の極秘訪問がキーウに到着してゼレンスキー大統領との会談後に発表されたのに対して、岸田首相の訪問は到着する前に報道され、日本テレビはポーランドのジェシュフ空港で首相を乗せたとみられる車列を撮影、ウクライナとの国境の町、プシェミシル駅でも首相が列車に乗り込む映像を日テレとNHKがスクープしている。
独自に情報を掴んだか、あるいは、首相サイドが“極秘訪問”の姿をアピールするために一部のメディアに情報を流して映像を残させたのか、どちらかだと見られている。
3月22日の朝刊各紙は、読売と産経は「電撃訪問」と報じたが、他紙は「首相、キーウ訪問」(朝日)など“電撃”の文字を見出しに入れていない。
自民党の外交族議員は、中国の習近平・国家主席のロシア訪問に岸田首相は焦りを募らせていたと指摘する。
「習近平は“和平案”なるものを携えてロシアを訪問し、プーチンとの首脳会談日程の後にゼレンスキーと電話会談すると見られていた。そうなれば世界のメディアは習-ゼレンスキー会談を大きく報じる。岸田総理がその後にキーウに行っても赤っ恥をかくだけになるから、なんとしてもその前にウクライナに行かなければと焦った。ロシアも習近平のロシア滞在中にキーウにミサイルを撃ち込むわけにはいかないだろうから、総理は習近平のおかげで比較的安全にキーウに行くことができたとも言える」
※週刊ポスト2023年4月7・14日号