岸田文雄・首相が3月21日にウクライナを電撃訪問した。G7各国首脳の中で唯一ウクライナを訪問していなかった岸田首相にとっては悲願でもあり、“英断”をアピールする絶好のチャンスでもあったはずだ。しかし、海外メディアの報道は冷ややかだった。
フランスの有力紙ルモンドは岸田首相がG7首脳で最後にウクライナ入りしたことを「日本は安全上のリスクを理由に長いあいだ訪問をためらっていた」と報じ、英国BBCは同時期にロシアを訪問した中国の習近平・国家主席と比較して「日本と中国の指導者は、紛争で敵対する国々に、それぞれ戦略的に訪問した」と報じるにとどまった。
米ワシントン・ポストも、「ロシアに立ち向かう西側陣営の側において日本がアジアのリーダーであると示す努力をしている」と“努力は認める”という程度だ。
西側メディアさえ“岸田よくやった”とは言ってくれなかったのだ。
外務省OBの武藤正敏・元駐韓大使は、外交評価は「ゼロに近い」と指摘する。
「今回の訪問は行かないよりはましかもしれないが、意味のない訪問です。国際社会からは、『何しに行ったの?』という受け止めになっている。日本はウクライナが最も求めている軍事支援ができません。武器供与などができない。お金でも支援は支援ですが、国際社会からすれば“何してんの”という扱いです。
そのことはあらかじめ分かっていた。だったら、G7の中で真っ先に、ウクライナ訪問すべきだった。軍事支援はできませんが、いの一番にウクライナ訪問すれば、日本の気持ち、思いをウクライナや国際社会に示すことができたはずです。それなのに、他国の首脳が行った後に、G7サミットの議長国だからという理由で遅れてついていった。
国際社会で自立した国として振る舞うには、自国にはどういう役割が求められているのかを理解しなければなりませんが、岸田首相にはそれができていない。だから地元・広島で開催するG7サミットで、ウクライナ訪問の“実績”を強調したところで支持率が上がるようなことはないでしょう」
周回遅れのウクライナ“電撃”訪問で赤っ恥をかいた岸田首相が、広島サミットにも独りよがりな思い入れで臨むようなら、結果は同じにしかならないだろう。
※週刊ポスト2023年4月7・14日号