「鬼」といえば、テレビ・アニメでは『鬼滅の刃』を連想する人が多いかもしれないが、今、「鬼」をテーマにしたテレビ番組が急増している。なぜ今「鬼」なのか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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1日夜、『特別編集版「鬼滅の刃」遊郭潜入編』(フジテレビ系)が放送されます。こちらは9日スタートのアニメ『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』(フジテレビ系)を目前に控えて放送される前シリーズの特別編集版。翌週土曜の8日も含め、2週連続で約2時間30分の特番として放送されます。
注目すべきは、翌2日のゴールデンタイムにも、3時間特番『妖怪ランキング大百科 鬼強い!鬼と巨大&地獄のヤバいもののけたちが大集合!』(フジテレビ系)と、3時間特番『THE鬼タイジ』(TBS系)が放送されること。
前者は「妖怪のプロフェッショナル集団が独自目線でランキングする」というコンセプトの特番ですが、タイトルからも“鬼”を前面に出している様子がうかがえます。一方の後者は「襲いかかる鬼をタレントが撃ち倒す」というコンセプトのアトラクション型バラエティ。さまざまな色の鬼が登場するほか、巨大病院を占拠したラスボスの鬼も登場するようです。
さまざまな色の鬼、巨大病院を占拠……と聞いてピンときた人もいるのではないでしょうか。3月18日に終了した土曜22時台放送の『大病院占拠』(日本テレビ系)は、「さまざまな色の鬼の仮面をかぶったテロリストが病院を占拠する」という筋書きのドラマでした。
また、日曜の20時台に放送されている『千鳥の鬼レンチャン』(フジテレビ系)は、その番組名通り“鬼”をフィーチャー。メインはカラオケ企画ですが、その背景に鬼の巨大な絵や仮面などが置かれるほか、各所でモチーフとして使用しています。
その他でも、昨年10月に“鬼”型宇宙人のラムがヒロインのアニメ『うる星やつら』(フジテレビ系)が36年ぶりに復活。今年3月まで放送されたほか、来年にも次期シリーズの放送予定があるそうです。
なぜテレビはこれほど“鬼”をフィーチャーしているのでしょうか。
“鬼”の番組が土日に集中するワケ
『鬼滅の刃』の人気が影響していることは間違いありません。特に2020年10月に『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』が公開されて以降は、子どもたちだけでなく親の世代も見てもらえることから、「ファミリー視聴が見込める最大のコンテンツ」となり続けています。実際、フジテレビがすでに見たはずの「無限列車編」や「遊郭編」を土曜ゴールデンタイムに放送することからも、それがわかるでしょう。
くしくもその2020年は、春にビデオリサーチの視聴率調査がリニューアルされた年でした。年代ごとの個人視聴率などが明確になったことで、民放各局がスポンサーの求めるコア層(主に13~49歳)に向けた番組作りにシフト。最初の改編期である2020年秋、次の2021年春、さらに2021年秋、2022年春、2022年秋……と半年ごとにその傾向は強くなっていきました。
なかでもコア層を効率よく獲得できるのがファミリーをターゲットにした番組であり、だからこそ『鬼滅の刃』であり、その人気で身近なモチーフとなった“鬼”にスポットが当てられる機会が増えているのです。前述した番組のほとんどが「学校も会社も休みの土日に放送されている」ことからも、“鬼”がファミリーをターゲットにした戦略であることがわかるでしょう。