慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターでセンター長を務める新井康通教授らの研究によると、100歳を超える「百寿者」の人数は、調査を始めた30年前(1992年)は全国で4152人だったが、2022年には9万人を超え、実に20倍以上に増えているという。
新井教授によると「現在も研究は継続中ですが、110歳以上の方々の特徴や共通点がわかってきました」とのことだが、まず大事なのは、「認知機能」の維持だという。
「特にスーパーセンチナリアン(110歳を超えた人のこと)は100歳時点でのMMSE(認知症スクリーニング検査)のスコアが高く、認知機能が高かった。日常生活がしっかり自立していることで、病気にもなりにくいことを示唆します」(新井教授、以下同)
さらに、認知症になりにくい遺伝的傾向も確かめられたという。
「スーパーセンチナリアンはアルツハイマー病のリスクを高める遺伝子ApoE4を持つ人が少ないこともわかりました。100歳時点の認知機能の高さと合わせ、百寿者の健康寿命と認知症には何らかの関係があると推察できます」
研究チームの調査によると、百寿者のほとんどが何らかの病気を抱えているが、一般の高齢者とは違う顕著な特徴もあった。
「百寿者でも高血圧、骨折の基礎疾患を持っている方も多いですが、糖尿病有病率は6%で、一般の高齢者の3分の1程度と非常に低かった」
また、日本人の死因1位である「がん」や、致死性の高い「脳梗塞」の罹患率が低く、動脈硬化も少なかった。そして、さらに「血液中のバイオマーカー(指標となる物質)」で百寿者、特にスーパーセンチナリアンに共通する2つの点を発見した。
心臓の働きに関連する「NT-proBNP」と、栄養状態を示すたんぱく質「アルブミン」の値だ。
NT-proBNPは心臓に負荷がかかった際に分泌されるホルモンが基となる物質で、心臓のポンプ機能が低下している人ほど数値が高くなる傾向にある。400以上で治療が必要で、さらに高いと重度の心不全の可能性もあるという。