1995年に連載が始まった『黄昏流星群』は、先駆的に「中高年の性」というテーマに斬り込んだ作品だ。連載28年目、コミックス68集を数える同作には、“男女の名シーン”も多い。
いくつものヒット作で知られる弘兼憲史氏は、どんな思いでこの長期連載を続けているのか、話を聞いた。
着想は居酒屋の会話
「僕の漫画制作のテーマはエロス。エロスを描きたい」を信条とする弘兼氏。彼が『黄昏流星群』を思いついたのは1995年の夜、48歳だった。同じ歳のいつもの仲間と居酒屋でつるんでいた席でのこと。
「人生ここまできた。思い残したことはないか?」という飲み話で一番盛り上がったのは「燃えるような恋はもう経験できないな?」「そうだね」。「でも弘兼、漫画ならできるんじゃないの」と誰かが言った。「そうか、50~60歳の色恋物語を描けるかもしれない」。
以来28年間、人気連載として続いてきた。漫画評論家からは「当時、おばさん、おじさんの恋話なんて誰も読むとは思わなかった。けれど、潜在的な読者を掘り起こした。鉱脈を当てた」と評された。
作品がこんなに長く続くと予期しなかったという弘兼氏は、スタート時点から今日までを振り返って、二つのポイントを挙げた。
「(人気シリーズの)島耕作は案外、創作の自由がないんですよ。情報漫画ですから、今日、経済界で起きている出来事を漫画に入れていかなければならない。その点『黄昏』は自由。時事、SF、ミステリー、ホラー、時代劇……なんだって描けるからやっていて楽しい。飽きないんですよね」