「雑草という草はない」とは、日本の植物分類学の父と呼ばれた牧野富太郎博士(1862〜1957)の名言だ。高知県の酒造業を営む商家に生まれ、独学で植物知識を身につけた博士の生涯が朝ドラ『らんまん』(NHK)で描かれ話題となり、植物園に注目が集まっている。芽吹きの春、植物の生命力を感じに出かけてみませんか──。
「朝ドラ『らんまん』の反響が大きく、全国の植物園で牧野富太郎博士にちなんだイベントが企画され、すでに行われているところもあります」
そう語るのは、日本植物園協会専務理事の倉重祐二さん。
「牧野博士は全国各地を巡り、国内で発見した新種の植物に名前をつけました。たとえば仙台市で発見した『スエコザサ』。これは亡き妻の名前にちなんで名付けたもの。それ以外に、高知県に自生しているジョウロウホトトギスや新潟県の瀬波海岸で見つけられたセナミスミレなどもそうです」(倉重さん・以下同)
植物園は日本全国に120園ほど存在するが、その形態はさまざまだ。
「それぞれの園が展示内容に趣向を凝らしています。“なぜその地域でその花が育ったのか”“名前の由来は?”など、解説も充実しています。植物栽培に関する相談コーナーや、専門スタッフによるガイドツアーなども人気です」
そこで、注目が集まる全国の植物園を紹介しよう。(※開園時間、休園日は季節やイベントによって異なる場合があります。詳細は各施設に問い合わせください)
●高知県立牧野植物園(高知県)
牧野博士の業績を顕彰した植物園。4月には、博士が27才のときに、日本人で初めて国内の植物に学名をつけた「ヤマトグサ」が見頃を迎える。「そのほか、牧野博士が実際に使った研究道具やノート、日記などの遺品類がそろう展示館では、博士の息遣いが感じられます」(倉重祐二さん・以下同)。
住所:高知県高知市五台山 4200-6
営業時間:9〜17時(入園は閉園30分前まで)
休園日:年末年始ほか
料金:一般730円、高校生以下無料
●京都府立植物園(京都府)
「大正13年に開園した日本最古の公立総合植物園で、桜の名所として有名です」。約1万2000種類の花や木が観賞できる。中でも春は、桜とチューリップのコントラストが圧巻。日本最大級の回遊式観覧温室には、下向きに咲くことから「貴婦人の耳飾り」といわれる中南米の植物「フクシア」など、珍しい植物も見ることができる。
住所:京都府京都市左京区下鴨半木町
営業時間:9〜17時(入園は16時まで)、観覧温室は10〜16時(入室は閉園30分前まで)
休園日:年末年始
料金: 一般200円、高校生150円、中学生以下無料(温室は別途、入園料と同額の観覧料が必要)
●神代植物公園(東京都)
東京を代表する総合植物園。「バラや桜、ツツジ、ダリア、ツバキなど、昭和36年の開園当時から時間をかけて収集されたコレクションは見応え充分です」。特に正門付近に植えられたツツジの大群は280品種、1万2000株と、ほかに類を見ない規模。4〜5月にかけてはミツバツツジやクルメツツジ、ヒラドツツジなどが花開く。
住所:東京都調布市深大寺元町5-31-10
営業時間:9〜17時(入園は16時まで)
休園日:月曜(祝日の場合はその翌日)、年末年始
料金: 一般500円、65才以上250円、中学生200円(都内在住・在学の場合は無料)、小学生以下無料