死の間際に花畑や三途の川などを見るといわれる臨死体験。なぜ、多くの人からそういった報告がされるのだろうか──。
「ぼくは人生で2回、臨死体験をしています」
そう話すのは、テレビ番組でも活躍する国際弁護士の八代英輝さんだ。
「1度目は高校生のとき。登校時にバイクで車と正面衝突しました。車2台を飛び越えて顔から地面に激突したようです。意識がなくなる直前、子供の頃からの思い出が走馬灯のようによぎりました。自分でもおかしな話だと思うのですが、意識を失っている間はピンクや黄色、色とりどりの花が咲くお花畑にいた。その先に川が流れていて、対岸に受付の机があったんです。そこから『早くこっちに来て』と呼ばれるので、舟に乗って渡ろうとしたときに、事故現場で意識が戻りました」
2度目の臨死体験は、23年前に受けた心臓カテーテル手術の最中だった。局所麻酔で手術を受けていた八代さんが、枕元にあった心拍計のモニターを見ていたら、突然、波形がフラットになった。
「ピーッと音が聞こえてきて“これはまずい”と思った途端、視界が真っ暗になりました。次の瞬間には手術室の天井の角から自分を見下ろしていた。ぼくの体に蘇生措置をしている医師や、手術室の外に駆けつける病院長や医師たちがいました。
それと同時に、まるで2つの画面を一緒に見ているような感じで、高校時代と同じお花畑にいました。川の向こうに受付が見えて、“ここは渡ったらダメだ”と思った瞬間、意識が戻りました。心臓が止まっていたのは2分ほどだったようです」(八代さん)
どうやら「体の外から俯瞰して自分を見る」「お花畑にいる」というのは、臨死体験者に共通する“あるある”のようだ。臨死体験などを紹介した『死の医学』(集英社インターナショナル)著者で獨協医科大学病院の脳神経内科医、駒ヶ嶺朋子さんも患者から類似の話を聞いている。
「ある人は、フロントガラスに頭を突っ込むほどの交通事故に遭い、8時間に及ぶ手術を受けました。体外離脱して、事故現場を空から見て、“もうダメだ”と思ったそうです。空にはほかにも飛んでいる人がいて、人が流れる方向について行くと、光り輝く人に“こっちじゃない”と合図された。そこで引き返すと意識が戻って、救助隊に救出されるところだったそうです。
冷たい箱の中にいたら、光が出てきて意識が戻ったと話す人もいらっしゃいます。信心深くないかたでも経験されているし、ご本人は臨死体験だと思っていないことも多いため、経験者はもっと多いのではないかと考えられます」