何種類もの薬に頼りきりになることのリスクは決して小さくない。歳を重ねると複数の診療科を受診するケースが増えるが、そこで「危ない飲み合わせ」の問題が生じることがあるからだ。
薬の処方時に医師や薬剤師が参照する薬の添付文書には、相互作用リスクがある薬の組み合わせが明記されているが、実際にはそうした組み合わせが処方されているという。薬剤師の長澤育弘氏(銀座薬局代表)が言う。
「医師が診察時に電子カルテで薬を処方する際は、『併用禁忌』や『併用注意』の組み合わせに警告が出ます。しかし、別の医療機関や調剤薬局で処方された薬まで1人の医師や薬剤師が把握するのは非常に困難です」
本誌・週刊ポストは長澤氏監修のもと、降圧剤の作用を減退させたり、逆に増強したりする薬の危ない飲み合わせを表にまとめた。
まず注意したいのが、「降圧剤」と「降圧剤」の組み合わせだ。複数の降圧剤が併用されるケースは多いが、加齢により肝臓や腎臓の機能が衰え、薬の成分を代謝・排泄する機能が低下している場合、“効きすぎる”危険がある。
カルシウム拮抗薬とほかの降圧剤、サイアザイド系利尿薬とほかの降圧剤などの組み合わせが降圧作用を強める恐れがあるとされる。長澤氏はACE阻害薬とARBの併用に注意を促す。
「腎機能障害や高カリウム血症を引き起こす恐れがあります。高カリウム血症が重症化すると不整脈を起こすことがあり、腎機能が低下しやすい高齢者ほど注意が必要です」
降圧剤と同時に処方されることが多い糖尿病治療薬との組み合わせにも注意が必要だ。
「頻脈を抑える作用があるβ遮断薬と糖尿病治療薬の組み合わせでは、β遮断薬が『低血糖の初期症状としての頻脈』をわかりにくくさせて、重症低血糖を招く恐れがあり、危険です。またループ利尿薬とSGLT2阻害薬の組み合わせは利尿作用が増強されて、低血圧になる恐れがある」(長澤氏)
薬だけでなくサプリメントや健康食品にも危険な飲み合わせは存在する。
「薬と同じ成分を薬よりも多く含むサプリもあるため、飲み合わせには注意が必要です」(長澤氏)