「ダイエットの基本は、摂取カロリーが消費カロリーよりも低いこと」──これを信じて、食事を減らしたり、好きな食べ物をがまんしたりしているのに、なかなかやせないという人もいるのではないだろうか。
医師で医療ジャーナリストの森田豊さんは、肥満患者の7割がモナリザ症候群だというデータもあると語る。モナリザ症候群とは、自律神経の切り替えがうまくいかず、代謝が悪くなる状態のことだ。
「自律神経には、体の“アクセル”になる交感神経と“ブレーキ”になる副交感神経があります。通常、朝起きると交感神経がオンになってアクセルがかかる。すると活動量を上げるためにアドレナリンが分泌されます。アドレナリンには、消費カロリーを上げて脂肪を燃焼し、ため込みにくくする働きがある。ところが、昼夜逆転など生活リズムが乱れていたり、起きてからダラダラ過ごしていると交感神経がオンにならず、代謝が上がらないまま一日を過ごすことになるのです」(森田さん)
つまり、いくら甘いものをがまんして努力しても、体の“やせスイッチ”が入っていなければ意味がないのだ。
「今日、やせられるか」は朝決まる
“やせスイッチ”を入れるためにまず取り組むべきは、代謝を上げること。朝の行動から、意識してみてほしい。内科医の左藤桂子さんが解説する。
「まずは、【1】起きてすぐ日光に当たること。人の体は、朝日を浴びることで交感神経のスイッチが入るのです。また、朝4時になると『コルチゾール』というホルモンが分泌されます。適切な量のコルチゾールは血糖値を一定に保ち、脂肪の燃焼を促します」(左藤さん・以下同)
コルチゾールは通常、朝にもっとも多くなり、ゆるやかに減少していく。ただし、過度のストレスや生活習慣の乱れによって増えすぎると、反対に体に脂肪をため込む働きをするので、注意が必要だ。
「腸内環境の乱れは、体にとって大きなストレスになるほか、代謝の低下も招きます。
睡眠中、口の中では雑菌が増殖している。中でも歯周病菌の一種『ジンジバリス菌』は、飲み込むと腸内環境の乱れを招きます。朝、【2】起き抜けに軽くうがいをして、口の中の雑菌を洗い流す習慣をつけましょう」
朝の習慣でもっとも重要なのが、【3】朝食を食べることだ。交感神経がオンになって胃腸の働きが活性化し、体温が上がるので、代謝を上げることにつながる。女性専門パーソナルトレーナーの石本哲郎さんも「朝食は絶対に食べた方がいい」と念を押す。
「食事を抜くと筋肉が落ち、筋肉が落ちれば代謝が下がる。これが基本です。
ただし、何を食べてもいいわけではありません。おにぎりやパンだけの朝食では血糖値が急激に上昇し、太りやすくなる。重要なのは、【4】糖質だけでなくたんぱく質もしっかり摂ること。納豆や卵にもち麦ご飯、フルーツなどがいいでしょう」(石本さん)