臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、ダサいとニュースになった川口春奈(28才)が出演するCMがもたらす「サリエンス効果」について。
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ネットを見ていたら、気になるタイトルのニュースが目に飛び込んできた。『どうした川口春奈?』だ。川口春奈がどうしたって?と、つられてクリックしてみた。出てきたのは『CM女王の最近の出演作が《ダサすぎて見ていて辛い》とファン落胆』という日刊ゲンダイDIGITALの記事。
書かれていたのは、川口春奈が出演している最近のCMがダサくて、ファンから残念な反響を浴びているというものだ。テレビでそのCMを見たが本当にダサい。というより昭和の匂いがして、新鮮で洗練されたクールな印象も最先端なイメージもない。CMはニデック株式会社のもので、緑のロゴが胸に入った白いつなぎを着て『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』のメロディーに合わせ「あんた、ニデックってなんなのさ」と歌ったり、4月から変更したという社名を繰り返し「名前覚えてね」と替え歌にして歌うバージョンなどがある。
川口さんといえば、2022年秋に主演したドラマ『silent』(フジテレビ系)での透明感ある演技が話題だったし、ニンゲン観察バラエティ『モニタリング』(TBS系)では、色々な着ぐるみを被って人を驚かせるキュートでお茶目な姿が好印象な女優だ。多彩な表情を見せて人々を魅了する川口さんだが、今回のCMはこれまでのイメージとはかなり違う。曲に合わせたイメージなのか、それとも昭和のあの時代のメイクがそうだったのか、濃いめでキリっとした印象だ。
だがこのダサさでこれまでと違う川口さんというのが、このCMのポイントだ。2022年度のCMタレントランキングでは、女性で2位になった川口さんだけに、視聴者にはそれぞれ彼女に対してある一定のイメージがあるだろう。もしこれが今風のスマートなCMで、イメージ通りの川口さんだったら、たぶん見ても印象に残らずスルーしていたと思う。見たことすら覚えていないかもしれない。人にはそれが視界に入っていても、インパクトがなければそこに注意を向けず、目に留めず無視してしまう「サリエンス効果」もしくは目立ち効果という傾向があるからだ。