今、国内外から熱い視線を集めているのが、植物工場スタートアップ企業のスプレッド(本社・京都市)だ。創業翌年の2007年に稼働した植物工場「亀岡プラント」で前代未聞の大規模なレタス栽培を始め、困難とみられた黒字化を6年で達成した。成功の秘密はどこにあるのか。同プラントを取材した。
植物工場はシステムのタイプによって、「人工光型」と「太陽光型」に大別される。同社のプラントはLED照明を使う人工光型の水耕栽培。日が射す昼間と暗い夜間を人工的に作り出し、照らす時間も範囲も育成状況を見ながらきめ細かく調整しているのが興味深い。広報部のヴォロンコヴ・ユーリ氏が説明する。
「創業者(稲田信二社長)は青果流通に30年以上携わっており、消費者の方が喜ぶ野菜を作りたい、野菜の品質を極めたい気持ちが原点。最初はマンションの一室で実験を重ねて美味しい野菜をどう作るかを研究し、温度や湿度のバランス、光の当て方や波長、養液の栄養素の配合などを最適化しています」
安定的に低コストで供給するには大規模化と高稼働率が鍵を握る。2018年、亀岡プラントで培った技術とノウハウを活用した世界初の大規模自動化植物工場「テクノファームけいはんな」(京都府木津川市)を始動、稼働率は99%を達成した。
2021年からは他社との協業による工場も展開し、中部電力などと静岡県袋井市に日産10トンの工場も建設中だ(来年稼働予定)。約100か国から年間約300件の問い合わせも相次ぎ、知名度は海外にも大きく広がっている。
取材・文/上田千春
※週刊ポスト2023年4月21日号