近頃、「超加工食品」というものに、注目が集まっている。超加工食品とは、簡単にいえば、「食品添加物や油脂などをたっぷり加えた食品」のことで、インスタント食品や菓子パン、スナック類などが該当する。これらの超加工食品が、さまざまな病気の発症リスクを高めたり、過食や肥満につながったりするという指摘がなされているのだ。しかし、世界中で超加工食品の消費量が急増している。米ボストン在住の内科医・大西睦子さんはこう話す。
「米ノースカロライナ大学の研究チームが2021年に公表した文書によると、超加工食品は現在、アメリカやイギリス、カナダで摂取される1日の総消費カロリーのおよそ半分以上、その他の高・中所得国でもおよそ20〜40%を占めています。研究チームは、“超加工食品は公衆衛生に対する世界的な脅威”と警鐘を鳴らしました」
日本の状況はどうか。東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野の篠崎奈々客員研究員らのグループは、32都道府県に住む成人2742人の8日間の詳細な食事記録データをもとに、超加工食品の摂取量を調査した。その結果、日本人が1日に摂取する総エネルギー量に対し、超加工食品が占める割合は27.9〜42.4%であることがわかった。
年齢別では、超加工食品の摂取量が60〜79才のグループが最も少なく、18〜39才のグループが最も多かった。また、喫煙者の摂取量が多くなる傾向もみられた。
「一方で教育歴や肥満度、収入などと超加工食品の摂取量の関連性は認められませんでした。また、年代と摂取量の相関関係は今後も継続的な調査が必要です。これからも若い世代の摂取量が多いままだと将来的に日本人全体の超加工食品の摂取量が増える恐れがありますが、加齢とともに健康意識が高まり、超加工食品を食べる割合が減っていく可能性もあります」(篠崎さん)
女子栄養大学大学院研究科長・教授の武見ゆかりさんらはサンパウロ大などと共同で、あらゆる食品を加工の性質や目的、程度に応じて分類するNOVA分類を用いて日本人の食事内容を研究し、2019年に公衆衛生専門誌に発表した。
「超加工食品のなかでも、コンビニで購入したおにぎりなどの穀物製品、スナック菓子、調味料が主要なカロリー源でした。また、データを個人別に分析すると、超加工食品を多く摂取しているのは未婚、ひとり暮らし、フルタイム勤務、低所得(年収200万円未満)の人たちでした。研究チームは“日本人成人の超加工食品の消費量の多さは、食事の質の低下と関連している”と結論づけました」(大西さん)
つまりこの研究によれば生活が苦しい人ほど食事の質が低下し、手軽な超加工食品に手を出すとの見解である。日本人の食生活と超加工食品の関係が徐々にわかりつつあるなか、健康に害をもたらしかねない食品とどう接すればいいだろうか。