カンボジアのリゾートホテルを拠点とし、特殊詐欺に関わったとみられる日本人の男19人がカンボジアから日本に移送され、逮捕された。全国紙社会部記者が解説する。
「19人はカンボジアのホテルを拠点とし、都内の60代女性にNTTドコモを装ってメッセージを送り、記載された番号に電話をかけてきた女性に『有料サイトの未払い料金がある』などとウソを言って、約25万円分を電子マネーで騙し取ったとされています。
警視庁はこのグループがおよそ75件もの特殊詐欺に関わったと見ています。グループの中には、ホテルに軟禁され詐欺に加担させられていた人もいるそうです」
在カンボジア日本大使館は昨年8月、日本人などが「好条件の仕事がある」などの誘い文句でカンボジアに招かれ、入国後に監禁されて詐欺などに加担させられる事案が発生しているという注意喚起を出していた。その日本大使館にメンバーのひとりから「ホテルで特殊詐欺をやらされていて外に出られない。助けてほしい」とSOSのメールが送られてきたことから、事件が発覚したという。
カンボジアでの取材経験があるフリーライターの鈴木智彦氏は、グループを率いるのは暴力団関係者だと指摘する。
「グループの中心人物に、九州を拠点とする特定危険指定暴力団・工藤会系傘下組織の関係者がいると見られています。
そもそも日本の暴力団は、暴排条例が全国で施行された2010年以降、規制の緩いカンボジアに目をつけ、次々と進出していった経緯がある。カンボジアは汚職や賄賂が横行しており、私がカンボジアで取材した際にも、日本の暴力団幹部がカンボジアの高官を接待する現場を目撃した。警察や軍部などの暴力装置をカネで抑えることは、暴力団の得意分野です。
暴力団を引退後に移住するケースもあり、山口組の大幹部だった後藤忠政・元後藤組組長もプノンペンに拠点を移しました」
だが今回のグループの背後には、別の反社会勢力の存在も見え隠れする。