現金給付の大盤振る舞いは、「6月解散」への布石なのか──。統一地方選前半戦の翌日、岸田文雄・首相はまるで“快勝”したかのような言い方をした。「自民党や与党に対する激励や期待の声はしっかり受け止めながら、引き続き気を引き締めて対応しなければならない」。結果は道府県議選、政令市議選ともに自民党は議席を減らし、奈良県知事選では自民推薦候補が日本維新の会の新人に大敗した。
それでも首相側近は、「総理は総選挙の腹を固めた」とこう語る。
「統一地方選では心配していた旧統一教会問題の影響はほとんどなく、大阪をのぞく道府県議会で自民党は過半数を維持した。保守分裂選挙となった奈良知事選で維新に負けたのは想定の範囲内。政権の足を引っぱる高市早苗・経済安保相(奈良県連会長)の責任問題になっているから総理に損はない。内閣支持率も上がっており、この結果なら解散・総選挙を打てると、総理は非常に機嫌がいい」
岸田首相はウクライナ極秘訪問の頃から「6月解散」に向けた準備を進めてきた。
訪問前の3月15日には「選挙の神様」と呼ばれる元宿仁・自民党事務総長と料亭で会談すると、訪問直後から候補者空白だった選挙区で次々に公認を決定。「10増10減」の定数是正で選挙区が5つ増える東京ブロックでは、新7区に丸川珠代氏を参院から鞍替えさせ、「女性限定」で候補者を公募した新18区では、公募開始からわずか20日間で元農水省の女性キャリア官僚を公認するなど“目玉候補”の擁立を急ピッチで進めている。
選挙対策の“現金給付”も異例なほどの大盤振る舞いだ。低所得世帯に一律3万円給付するのに加え、子育て世帯には子ども1人5万円上乗せなど「物価高騰対策」を名目に総額2兆円をバラマキ。さらには「少子化対策」として、児童手当の所得制限撤廃と支給対象を高校生まで拡大、出産費用の保険適用、返済不要の奨学金拡充など総額年8兆円のメニューを発表した。合わせて10兆円にのぼる「選挙対策予算」だ。政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。
「単なる統一地方選対策でこんな予算をつけたことはかつてない。このケタ違いの金額は明らかに総選挙対策です。
岸田首相は5月の広島サミットにG7首脳の他にインド、韓国、オーストラリアなど8か国の首脳を招いており、各国首脳が原爆慰霊碑に献花する姿を見せて国民にアピールしたあと、間髪入れずに6月解散に踏み切ることをはっきり視野に入れている」