健康を保つために、健康診断を受けるというという人も多いだろう。しかし、多くの検査を毎年のように受けることが、必ずしも健康につながるわけではないという。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師が語る。
「70代になると検査がQOL(生活の質)を下げることがある。たとえば、60代ならがん検診での早期発見・早期治療が残りの人生にもたらすメリットは大きいですが、70代以降はがんの手術がかえって健康に悪影響を与えたり、合併症のリスクが高まるケースもある。70歳を過ぎると個々人の健康状態などにより、検査を受けることによるデメリットがメリットを上回ることがあります」
上医師らの指摘をもとに何歳の時点で、どのくらいの頻度でその検査が必要なのかを整理したのが、別掲図だ。
男性のがん死亡者数第1位である肺がんの検査は、早期発見には向かない「肺レントゲン」ではなく、より精度が高い「胸部CT」が選択肢となる。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が語る。
「肺がんは喫煙歴が発症に大きく関わるので、喫煙の習慣がある人は40代からリスクによって1~5年おきに胸部CTを受けるといいでしょう。ただし、喫煙習慣がなく発症リスクが低い人なら、医師と相談のうえで75歳が検査のやめどきとなる」
大腸がんは「ポリープの有無」で判断が変わる。
「50歳までに1度は『大腸カメラ』を受けましょう。大腸ポリープが見つかったら経過観察のため2~3年に1回の頻度で検査を行ないます。ポリープがなければ毎年『検便』で様子を見つつ、5~10年に1度大腸カメラを受ければいい。異常がなければ、75歳以降は検便だけにして様子を見るでもいいでしょう」(谷本医師)
ピロリ菌の感染がリスクを高める胃がんは、「胃カメラ」を選びたい。
「40代のうちに胃カメラで胃の状態を調べ、ピロリ菌に感染していたら除菌する。その後は1~2年に1回、胃カメラを受けるのが望ましい。ピロリ菌がいなければ数年に1回程度受け、そのまま異常がなければ75歳以降は検査をやめてよいでしょう」(谷本医師)