元総理が銃撃で命を落としてから1年も経たず、今度は現職総理が爆弾で襲われるという事件が起きた。いったい何が犯人を凶行に駆り立てたのか。
「皆さんにご迷惑かけてよ、大変申し訳ないです。われわれも協力したいけど、する力がないんです。本人ね、ずっと(服役)せなあかん。あれはもう、一生反省せなあかんと思います。
何も連絡はない。(会ったのは)ずっと前ですわ。今までまるっきりそんなことはなかったから。うちの孫だと……かわいいことはかわいいけどね」
取材に応じた木村隆二容疑者(24)の祖父は、力なくこう話した。祖父が住む母方の実家は和歌山県内にある。同じ県内の雑賀崎(さいかざき)漁港において、“かわいい孫”は選挙演説に訪れた岸田文雄・首相を襲撃し、逮捕された。
父はお弁当を作っていた
木村容疑者は事件当時、母親とともに兵庫県川西市に住んでおり、漁港までは3時間以上かけて辿り着いた。
住まいは閑静な住宅街の一軒家だった。木村容疑者は、運送業を営む父と百貨店の化粧品売り場に勤める母の共働き家庭で、長女、長男とともに3人きょうだいで育った。
近所で商店を営んでいたという男性は、一家をこう懐かしむ。
「店には駄菓子を置いていたんだけど、木村くん(隆二容疑者)はきょうだいやグループの子らと一緒に来て、うまい棒とかゼリーとかよっちゃんイカだとか、10円や50円ぐらいのお菓子を買っていました。ムードメーカー的な明るい子でした。
ご主人は赤帽から独立して、個人の宅配業をしていました。早朝にうどんとか豆腐とかを配送して、帰ってきて仮眠してまた昼から配達に出て、って生活をしていて。その間に子どもたちのお弁当を作っていたらしくて、朝の仕事帰りに仮眠のための缶ビールを1~2本と、缶詰やソーセージなんかを『お弁当のおかずになるかな』って言って買っていきました。ただ、木村くんが中学校になると、『息子が学校に行かないんだよね』って不登校のことを何度か話していました」
近隣住民たちは、木村容疑者が年々引きこもりがちになっていったと口を揃える。容疑者の孤立と呼応するように、一家にも変化があった。近所に住む女性は言う。
「よく家からご主人の怒鳴り声が聞こえました。このあたりは閑静なので、響いて怖かったです。けれど、6年ほど前から、ご主人の姿が見えなくなりました」
数年前から、父とは別居していたという。一家にとって別れはそれだけではなかったと、別の近隣女性は言う。
「家で犬を飼っていて、隆二くんが散歩させていた記憶がありますが、何年か前に亡くなったそうです。それからは、コロナもあってそんなに出歩かなくなっていた」